■最終決戦の切り札…無惨を足止めするほどの血鬼術「棘の血鬼術」

 その大きな誤算とは、“浅草の男性”が発現させた血鬼術「棘の血鬼術」である。この血鬼術がその力を発揮したのは、原作コミックス16巻。アニメでは『鬼滅の刃』の「柱稽古編」のクライマックス、産屋敷邸における無惨との決戦の火蓋が切られた場面である。

 産屋敷耀哉が仕掛けた壮絶な自爆に巻き込まれた無惨。体を吹き飛ばされながらも驚異的なスピードで再生する彼の体を、突如として無数の「棘」のようなものが貫き、動きを封じ込めた。

 この棘こそが、“浅草の男性”の血鬼術「棘の血鬼術」だった。事前に空中にばら撒かれた無数の肉の種子から発動するこの術を、無惨は発動の直前まで察知することができなかった。

 突き刺さった体内でも幾重にも枝分かれする棘は引き抜くことが困難であり、鬼の始祖である無惨ですら、自身の体内に取り込んで吸収する以外に逃れる術はなかった。無惨ほどの鬼を、わずかな時間とはいえ完全に足止めした「棘の血鬼術」は、極めて強力な術だといえるだろう。

 この予想外の奇襲は、柱たちが戦場に集結するための時間を稼ぎ出し、最終決戦の行方を左右する重要な意味を持つこととなる。さらに、珠世が開発した「鬼を人間に戻す薬」を無惨に吸収させるという、決戦における重要な目的の達成にも貢献した。

 長い年月をかけて珠世が作り上げた「鬼を人間に戻す薬」は、無惨を打倒するための鍵となる重要な切り札であった。この貴重な薬を確実に無惨に吸収させるため、“浅草の男性”の血鬼術はなくてはならなかったのだ。

 物語序盤、名もなきモブキャラクターとして登場した彼が水面下で進化を遂げ、最終決戦という大一番で無惨を足止めするまでに成長するとは誰が思っただろうか。今やこの“浅草の男性”はファンの間で「浅草ニードル」と呼ばれ、愛されるキャラクターとなっている。

 

 鬼殺隊が総力をあげ、無惨を追い詰める最終決戦。ただの不運な犠牲者だったはずの“浅草の男性”は、珠世の助力と自らのポテンシャルによって、目を見張る活躍を見せた。愛する妻との幸せな日常を突然壊された彼の無念を思うと、少しは報われただろうかと胸が熱くなってしまう。

 劇場3部作として描かれるアニメ『鬼滅の刃』の最終章「無限城編」の続編では、ますます白熱した戦いが描かれるだろう。彼らの命を賭した戦いを、ぜひ、劇場で見届けたい。

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