吾峠呼世晴氏による『鬼滅の刃』は、今や世界中で絶大な人気を誇る作品である。物語の最終局面を描く劇場3部作の1作目『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、数々の記録を打ち立て、歴史に残る大ヒット作となった。
この壮大な「無限城編」に至る戦いのなかで、陰ながら極めて重要な役割を担った人物がいる。それが、物語序盤の浅草にて、鬼舞辻無惨によって突如鬼にされた青年だ。彼は不運にも無惨の毒牙にかかり鬼となったが、その場に居合わせた主人公・竈門炭治郎の機転によって人を喰らうことなく珠世に保護されることとなった。
以降、珠世のもとで治療を受けていた彼だが、後に彼の血鬼術が物語の重要な局面で大きな役割を果たすことになるのである。
そこで今回は、「無限城編」のキーパーソンともいえる“浅草の男性”について、その活躍を深掘りしていこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■たまたま居合わせただけ? 不運すぎる境遇
件の“浅草の男性”が初登場したのは、物語序盤で主人公・竈門炭治郎が宿敵・鬼舞辻無惨を群衆の中から見つけ出した時のことだった。
優れた嗅覚を持つ炭治郎は、鬼により家族が惨殺された生家に残っていたかすかな“鬼の匂い”を頼りに、大勢の人が行き交う浅草の街中でついに無惨を探し当てた。
長きにわたる鬼殺隊の歴史において、無惨本人と直接対峙したのは炭治郎ただ1人。それほどまでに用心深く身を隠していた無惨にとって、炭治郎の存在はまさに青天の霹靂であり、振り返った彼のその表情は驚きと困惑で歪んでいた。
人間の妻と娘を伴い、人に紛れて暮らしていた無惨。激しい怒りをあらわにする炭治郎から逃れるため、彼は近くを通りかかった青年を鬼に変えるという蛮行に出る。
結果、鬼に変貌した青年が暴れ出したことで群衆は混乱し、炭治郎は無惨を取り逃すこととなる。一方、鬼に変えられた青年は自身の妻に襲い掛かるが、炭治郎がこれを制止。その後、彼は無惨の支配から逃れている鬼・珠世のもとへ引き渡され、保護されることになったのである。
ただ浅草の街を歩いていただけなのに、理不尽に鬼へと変えられてしまった不運な青年。それが“浅草の男性”なのだ。なお、襲われた妻は一命を取りとめており、無事であることが分かっている。まさに不幸中の幸いだったと言えるだろう。
■高すぎるポテンシャル…支配からの解放だけじゃない?
珠世に保護された“浅草の男性”は、彼女のもとで治療を受けることとなる。後の珠世からの状況報告によると、彼は自我を取り戻しただけでなく、無惨の支配からも完全に解放されたことが判明している。
珠世は、太陽を克服した特異体質の鬼・竈門禰󠄀豆子の血を研究していた。その研究の成果もあり、禰󠄀豆子の血のおかげで浅草の男性は回復し、珠世や愈史郎のように人間を襲うことなく少量の血を飲むだけで生きられるようになったという。
かつて珠世以外に無惨の支配から逃れた鬼はいなかった。しかし、禰󠄀豆子というイレギュラーな存在がその状況を覆し始める。そして、“浅草の男性”が無惨の支配から逃れたという事実は、のちに無惨にとってある「大きな誤算」を生じさせる結果になるのである。


