■ 時系列がさかのぼっていく!season8第18話「右京、風邪をひく」
時系列を巧みに操った構成で知られているのが、season8第18話「右京、風邪をひく」である。
事件の発端となったのは、山奥で初老の男性の遺体が発見されたこと。捜査一課の伊丹憲一は、聞き込みで会った樫山ジュンという女性が何かを知っているとにらみ、再び聴取へ……。すると、彼女があっさりと自供して、事件はスピード解決してしまう。
特命係はこの解決を賞賛するが、その言動にはどこか不自然さが漂う。実はこの事件、特命係が事件発生前からかかわり、偶然が重なって解決に至っていたのだ。
時間はさかのぼり、逮捕の1日前。神戸は風邪を引いた右京の代わりに、自殺未遂をした女性の話を聞いていた。彼女は戸倉翔という男にひどい振られ方をしたという。ひと悶着の末、戸倉が彼女に高価なネックレスを渡すことで話はついた。このネックレスこそが、事件の重要なカギだった。
実は、戸倉はジュンとも交際していた。ジュンはこのネックレスを巡って戸倉が別の男と争い、殺害してしまったことを明かす。彼女はその死体処理を手伝わされたのだ。
驚くべきことにこのネックレスは、右京が数日前から盗難事件の品として探していたものだった。逮捕の2日前、右京は、ある家から高価なネックレスが盗まれた事件を捜査していたのである。
そのネックレスが、神戸が解決した男女間のトラブルとつながり、やがて殺人犯へとたどり着く。右京と神戸は事前にジュンに接触し、自供するよう説得していた。
つまり、伊丹たちは特命係がすでに解決していた事件を、自分たちの手柄だと思い込んでいただけに過ぎなかったのだ。
時系列が入り乱れる構成には混乱させられるが、奇妙な縁が事件を解決に導く過程は斬新でワクワクさせられた。DVD特典として時系列を並べ直した「時系列再編集版」も制作されており、両方を見比べてみるのも面白いかもしれない。
夢オチやリアルタイム進行、時系列のずれなど、『相棒』には記憶に残るユニークなエピソードも多い。単なるミステリーに留まらず、こうした驚きをたびたび与えてくれることも、本作が持つ大きな魅力だろう。
特に、今回紹介したseason21第19話「再会」は、長年のファンに向けたご褒美ともいえる遊び心に満ちている。こうしたエピソードの存在こそが、『相棒』が長年にわたって愛され続ける理由の1つなのではないだろうか。


