本格ミステリーからコミカル回まで、幅広い作風が特徴の刑事ドラマ『相棒』(テレビ朝日系)。天才警部・杉下右京とその相棒の活躍はもちろんのこと、時に制作陣の遊び心が詰まったエピソードが見られるのも魅力的だ。
物語の構成が複雑だったり、まるで現実世界とリンクしているような仕掛けがあったり……そうした凝った“異色回”を生み出せるのは、長年シリーズが続いている本作だからこそだろう。今回はその中から、特に視聴者を驚かせたエピソードを紹介していこう。
※本記事には作品の内容を含みます。
■まさかの夢オチ…season21第19話「再会」
season21の第19話「再会」は、右京と歴代相棒の歩みをなぞるような不思議なエピソードである。
山奥で何者かによって監禁されてしまった右京と亀山薫。何とか脱出した2人は追手から逃れるため二手に分かれる。薫はたどり着いた集落から捜査一課に連絡を取り、一方の右京は、道中で不思議な出会いを果たす。
まず、山奥の別荘で出会った男は右京とかつての上司が似ていると語り、最後に「神戸と言います」と名乗った。「神戸」といえば、二代目相棒の名前である。思わぬ名前を聞いて、右京は少しだけ表情をほころばせる。
神戸と別れた右京が次に出会ったのは、自分が犯した過ちに悩む青年だ。親身に話を聞く右京だが、彼の名が「トオル」だと知ると複雑な表情を見せる。それは、右京が「相棒を逮捕する」という経験をした三代目の相棒と同じ名前だった。
さらに山奥で出会った自由奔放で皮肉っぽい男は、「冠城です」と名乗り、これには右京も思わず声を上げた。これまた四代目相棒と同じ名前だったからだ。
思いもよらない出会いが続く中、右京は追手から逃れ、再び薫と再会する。この一連の流れは右京が薫と別れ、神戸尊、甲斐享、冠城亘を経て、再び薫と再会するという特命係の変遷を象徴しているかのようだ。
終盤、薫は右京に問う。「右京さんは、よかったですか? 俺とまた一緒に……」という言葉に対し、右京は「君との再会は、運命だと思っています」と答えた。思わず感極まる薫だが、その瞬間、目を覚ます。
そこは小料理屋「こてまり」。このエピソードは捜査の疲れから眠ってしまった薫が見ていた、空想と現実の出来事がごちゃ混ぜになった夢だったのである。
しかし、薫は右京の「運命」という言葉だけは本当だったと悟り、感慨深い表情を浮かべる。まさかの夢オチには驚かされたが、ファンにとっても印象的な、さまざまな感情が湧いてくるエピソードである。
■リアルタイムで事件が進行!season9第7話「9時から10時まで」
season9第7話の「9時から10時まで」は、事件の発生から解決までを“リアルタイム”で描くという試みがなされた回である。つまり、『相棒』の放送時間に合わせて作中で事件が進行し、放送終了時刻に解決する構成だ。
午後9時、神戸は宮部たまきと映画を楽しんだ後、ラウンジに立ち寄った。そこで骨董品詐欺の現場を目撃し、犯行を阻止しようと単独で動き出す。
一方、まだ仕事中の右京は、奥田徹という男が銃殺された事件に興味を惹かれていた。被害者の口の中には、2000万円もする「景徳鎮」の皿の納品書が入っていた。やがて右京は、神戸が「骨董品詐欺」を阻止しようとしていることを知り、2つの事件のつながりに気づく。
神戸が追っていた詐欺師・伊藤正隆は、殺害された奥田の仲間だった。奥田がそうと知らず暴力団に贋作を売りつけてしまい、伊藤はその穴埋めとして2000万円の調達を命じられていたのだった。
しかし、人質となった奥田は伊藤を逃がすため、チョコレートの銀紙をナイフに見せかけて暴力団員に襲い掛かり、返り討ちにあって殺される。まさに、ニセのナイフで“騙し”、自ら死を選んだのだった。その死を知った伊藤は逃走を図ろうとするも、右京と神戸によってすべてを看破され逮捕される。
事件が解決した後時計を見る右京。神戸と他愛のない会話をしながら店を出るが、その後ろにある時計の時刻は「9時54分」。まさに『相棒』の放送が終わる時間である。
別々の事件が徐々につながっていく様をリアルタイムで見せる構成は圧巻であり、粋な演出に制作陣の遊び心が感じられた。


