シャアをも超える人気ぶり…昭和アニメ女子を沼落ちさせた「影あるイケメン」島村ジョーの悲劇 【昭和オタクは燃え尽きない】の画像
「サイボーグ009 1979 DVD-COLLECTION Vol.1」(東映ビデオ) (C)石森プロ・東映

 石ノ森章太郎先生の誕生日である1月25日、2026年に配信予定の新作アニメ『サイボーグ009 ネメシス』のティザーPVが公開されました。

 なかでも昭和ファンの胸を熱くさせたのが、現在は「BARBEE BOYS 4 PEACE」として活動するロックシンガー・杏子さんが歌い上げる主題歌『誰(た)がために』。

 これは1979年放送の『サイボーグ009』のテレビシリーズ第2作目、通称『新ゼロ』と呼ばれるアニメのオープニング主題歌だった不朽の名曲で、昭和の傑作と名高いアニメ2作目に思いをはせるファンが続出しました。

 そして『誰がために』が流れる2作目のオープニング映像を担当していたのは、伝説のアニメーター・金田伊功さん。同映像内でも、いわゆる「金田光り」や「金田ポーズ」がさく裂しており、石ノ森先生自らが綴った『誰がために』の歌詞と見事にマッチしていました。

 同作の監督は、後に『装甲騎兵ボトムズ』などを手がける高橋良輔さん、キャラクターデザインは『魔法のプリンセス ミンキーモモ』などを担当することになる芦田豊雄さん、そして日本が誇る名作曲家のすぎやまこういちさんが音楽を手がけ、日本サンライズがアニメーション制作を担いました。

 もはや伝説と語り継がれるレベルの超豪華布陣により、『新ゼロ』と呼ばれる『サイボーグ009』のテレビシリーズ第2作目は生まれたのです。

 そこで今回は、当時リアルタイムで作品にどっぷりハマった筆者が、時代を超えても色あせない『新ゼロ』の魅力を振り返ります。

※本記事は、作品の核心部分の内容も含みます。

■芦田豊雄さんが描く潤んだ「瞳」と、井上和彦さんの声に込められた「憂い」

 昭和の時代、少年漫画の金字塔『サイボーグ009』は、二度にわたってテレビアニメ化されています。1968年(昭和43年)放送のテレビシリーズ第1作目(通称、『旧ゼロ』)は、なんとモノクロ放送。当時、島村ジョーの声を担当したのは『機動戦士ガンダム』のガルマ・ザビなどで知られる森功至さん(当時は田中雪弥という名義)でした。

 1960年代に放映された『旧ゼロ(劇場版を含む)』は、石ノ森先生の原作漫画の初期の絵柄を反映した丸みを帯びたフォルムと大きな瞳が特徴。009は一人だけ白い戦闘服をまとい、森さんの凛々しい美声も相まって「仲間と力を合わせて悪を討つ!」という熱血少年ヒーローとしての勇ましさが強調されていました。

 一方、筆者が心を奪われたのが1979年放送のテレビシリーズ2作目、通称『新ゼロ』の島村ジョーです。芦田豊雄さんのキャラデザは、初代テレビシリーズよりも頭身が上がり、顔立ちもシャープに。しかし、その表情はどこか優しく、内面に秘めた脆さのようなものも感じられました。

 トレードマークの長い前髪が片目を隠す演出が印象的で、時折見せる伏し目がちなしぐさと、アップで描かれた時の潤んだ瞳は、彼が心の奥底に抱える迷いや葛藤を表しているかのようです。

 この繊細なビジュアルになった『新ゼロ』のジョーの声を、『キャンディ・キャンディ』のアンソニー役などで絶大な女性人気を誇った井上和彦さんが担当。憂いを帯びた、柔らかな声が見事にマッチします。

 鋼の体と最強の戦闘能力を持ちながら、心に深い孤独を抱える主人公のジョー。視覚と聴覚の両方から「これでもか!」といわんばかりに“危うさ”を訴えかけ、当時の女性ファンの「守ってあげたい!」という庇護欲や母性本能を激しく揺さぶったのです。

 その“危うさ”の根源は、あまりにも悲しい彼の生い立ちにありました。

 日本の姓である「島村」を名乗るジョーの髪は明るい茶色か金髪で、父親は外国人です。両親を亡くしたジョーは孤児院で育ち、さまざまな差別を受け、偏見の目で見られることになります。

 犯罪に巻き込まれて少年院に収監されたジョー(※作品によって理由は異なる)は、脱走をもくろんだ際に悪の秘密結社「ブラックゴースト」に拉致され、サイボーグへと改造されたのです。

 こうした数奇な宿命を背負った“繊細な主人公”の存在に、当時の少女漫画界も無関心ではいられなかったのでしょう。実は1970年代の半ばには、『週刊少女コミック』(小学館)でも『009』の不定期連載がおこなわれ、そこではジョーの名は「ジョウ」と表記。石ノ森先生も少女誌を意識したのか、心なしかまつ毛が多めな美少年に描かれていました。

 当時、サンリオが刊行していた高価な少女漫画雑誌『LYRICA ~リリカ~』で、すでに石ノ森先生が描く“片目隠れの繊細キャラ”の極致ともいえる『魔法世界のジュン』に触れ、その美しさのとりこになっていた筆者。その「下地」があったところに『新ゼロ』の島村ジョーに出逢い、今でいう沼に“転げ落ちる”のは必然だったのかもしれません。

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