■「裏切られ」「傷つく」島村ジョーの姿に女性ファンも涙
前述した『新ゼロ』のオープニング主題歌『誰がために』は、ファンの心を震わせる名曲です。石ノ森先生の歌詞と、金田伊功さんによる躍動感あふれる映像描写で、作品世界を完璧なまでに表現しています。
オープニングのタイトルとともに映し出されるジョーのアップ。仲間たちを見守るような穏やさから一転、咆哮するかのような激しい表情に変わり、仲間たちの戦う姿が映し出されます。そして少しうつむき加減になったジョーの目からは、一筋の涙がこぼれ落ちるのです。
この繊細なジョーの表情の変化だけで、まるで“加速装置”のような速さで女性ファンのハートを撃ち抜きました。
さらにアニメ本編では、彼を取り巻く環境が容赦なくジョーを打ちのめしていきます。
第12話では、数年前の自分と同じ目をした若いボクサー・猛を通じて、ジョーの過去が少しだけ語られます。彼の過ちに気づいたジョーが体を張って助けようとしますが、サイボーグだと分かった猛から「戦いのおばけ」と罵声を浴びさせられるのです。
さらに第20話では心身ともにジョーを痛めつける展開があり、視聴者の心をえぐりました。
かつての恋人だったマユミから、自分たちを守って欲しいと頼まれたジョー。マユミには既にレバンという恋人がおり、命を狙われている彼の護衛を元カレに頼むのです。
健気にもジョーは、サイボーグであることを隠しながら戦います。すると、しびれを切らしたマユミは「私たちを守って! あなたのその鋼鉄の体で!!」と叫び、さらに「(正体を知らなければ)誰があなたなんかに」と、ひどい言葉を容赦なくぶつけます。
悲しみを振り払うように大軍に突っ込むジョー。ボロボロになった彼が意識を失う寸前に目にしたのは、恋人とともに逃げていくマユミの姿でした……。
第37話でもジョーは、ネオ・ブラックゴーストの策略によって、信頼するフランソワーズ(003)に撃たれるという悲劇に見舞われます。どれだけ裏切られ、利用され、傷ついたとしても、彼は「誰かのために」戦うことをやめません。その姿は、もはや聖者のようにも見えました。
そんなジョーのことをテレビの前で見守った昭和のアニメ女子の多くは、「これ以上、ジョーを傷つけないで!」と祈るような気持ちだったことでしょう。


