■アニメ誌を席巻した『新ゼロ』人気と、劇場版『超銀河伝説』に感じた違和感

 1970年代後半、『宇宙戦艦ヤマト』が巻き起こしたアニメブームは社会現象となり、アニメは「子どものもの」から「若者の文化」へと移行していきます。その熱気の中、松本零士先生の『キャプテンハーロック』の後番組として同じ放送枠でスタートしたのが『新ゼロ』でした。

 当時『アニメージュ』(徳間書店)や『ジ・アニメ』(近代映画社)などのアニメ誌では、毎号のように『新ゼロ』が特集され、表紙も飾っています。

 特に『アニメージュ』の人気企画「第3回アニメグランプリ(1980年下半期)」においては、『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブルを抑えて、島村ジョーがキャラクター部門1位を獲得。長期間、人気上位の常連として君臨します。

 芦田さんの描くピンナップやカセットレーベルなどの付録、井上和彦さんのグラビアなど、当時の声優ブームも相まって、多くの女性ファンたちを魅了しました。今なお続く「009=井上和彦さんの声、芦田さんの絵」というイメージは、この熱狂の中で刷り込まれたのでしょう。

 その爆発的な人気に応え、1980年に劇場版『サイボーグ009 超銀河伝説』が公開されます。ところが、テレビシリーズの熱量そのままに映画館へと足を運んだ筆者は、少々複雑な感情を抱きました。

 声優陣こそほぼ続投したものの、アニメーション制作はテレビシリーズの「日本サンライズ」から「東映動画(現:東映アニメーション)」へと移行。それに伴いキャラクターデザインも、原作漫画や、当時のSF映画ブームを意識したような劇画調に一新されました。その影響もあってか、銀幕の中のジョーは少しだけ「遠い世界のヒーロー」に思えたのです。

 もちろん、東映動画による圧倒的なスケールの宇宙描写や豪華な演出は目を見張るもので、作品自体はヒットを記録します。しかし、『新ゼロ』での「憂い」や「脆さ」を感じたジョーに恋をした身としては、どこか別の作品のように感じられたのも事実です。

 もしかすると『新ゼロ』が生み出した「島村ジョー」のビジュアルとキャラクター性は、当時の女性ファンにとって唯一無二の「聖域」となっていたのかもしれません。


 誰よりも傷つきやすく、それゆえに誰よりも優しい……完璧なヒーローではなかった1979年版『新ゼロ』の島村ジョーは、戦いの中で流す涙が似合う主人公でした。

 芦田豊雄さんによる繊細さと強さを両立させたキャラクター造形、高橋良輔監督が演出したハードなSF人間ドラマは、個人的にはある種の完成形のようにも思えます。単なる勧善懲悪にとどまらず、“兵器”としての宿命や孤独といった内面をより深く掘り下げた『新ゼロ』は、大人の鑑賞にたえうる傑作として、今も燦然と輝いているのです。

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