■人ならざる者への目覚め…『亜人』永井圭
不死身の肉体を持つ新生物「亜人」をテーマに、突如その力に目覚めてしまった少年の苦悩と葛藤を描いた『亜人』。2012年より『good!アフタヌーン』(講談社)にて連載された桜井画門氏の漫画で、過酷な運命に翻弄される主人公や彼を取り巻く人間模様が緻密に描かれている。
本作の主人公は、高校に通う17歳の少年・永井圭。国立医学部模試では1桁の成績を残すような秀才で、その優れた頭脳や鋭い注意力を物語の随所で発揮している。
勉強熱心で普通の高校生だった永井だが、第1話で友人との帰り道にトラックにはねられてしまう。事故の様子は凄惨極まりないもので、その場にいた誰もが永井が命を落としたと信じて疑わなかった。
しかし次の瞬間、永井の体は再生をはじめ、彼は血だまりの中から自力で立ち上がる。その驚異的な再生能力と不死性は、まさに世界中の人々が恐れおののく「亜人」の特徴そのものであった。
自身が亜人だったことにとまどう永井だが、その復活劇は撮影していた人々の手によって瞬く間に世界に拡散されてしまう。
この一件を機に、彼は日本で3例目の亜人として、政府や他の亜人など、さまざまな組織から狙われる過酷な運命をたどることになるのだ。
トラックに轢かれるという凄惨な事故もショッキングだが、そこから体が再生する光景は、まさに彼が“人ならざる者”であることを読者に印象づけた。
亜人の不死性を示しただけでなく、正体が分かるや否や、すぐさま永井を忌避する世界の非情さ、人間の差別意識のおぞましさをも感じさせる幕開けであった。
今回取り上げた作品たちは、いずれも第1話から主人公が想像を絶する過酷な事態に直面し、読者に凄まじい印象を残した物語である。
平凡な日常シーンから一変、主人公たちに降りかかった唐突な悲劇。連載当時、思わず息をのんでしまった読者も多かったことだろう。
常識をくつがえす展開で始まる物語は、いずれも読者の心をつかんで離さない強烈な魅力を持っているのである。


