■記憶喪失から突然の事故まで…普通に生きられないのが大映ドラマ

 大映ドラマのヒロインたちに、もはや平穏な日常など存在しない。彼女たちの人生は、出生の秘密やいじめに加え、記憶喪失、事故、多重人格といった、常に予測不可能なアクシデントに見舞われるのだ。

 1985年から86年にかけて放送された『ヤヌスの鏡』は、厳格な祖母に育てられた優等生の女子高校生が、あるきっかけで凶悪な別人格に変貌するという「多重人格」がテーマだ。

 杉浦幸さん演じるヒロイン・小沢裕美は、夜になると別の人格が現れ、暴走族のような姿で暴れまわる。オープニングで流れる来宮良子さんのおどろおどろしいナレーションも相まって、ヒロインが生きる過酷な世界の異常性を強烈に印象付けた。  

 また、同じく1985年から1986年に放送された『ポニーテールは振り向かない』は、伊藤かずえさん演じる少女・麻生未記が、ドラマーとして世界に通用するロックバンドを目指す物語が展開される。

 本作でも恋愛トラブルや暴力事件など、あらゆる不幸が彼女を襲う。極めつけはクライマックスだ。未記は切れたギターの弦が目に当たるという不慮の事故により、両目の視力を失ってしまうのである。

 この他にも大映ドラマでは、交通事故や冤罪、不治の病といった、あらゆる不幸のバリエーションがヒロインに降りかかる。しかし彼女たちは屈強な精神力で、いかなる困難も乗り越えていくのだ。

 一見か弱そうに見えるヒロインが燃えるような闘魂を見せるギャップこそが、大映ドラマならではの醍醐味といえるだろう。

 

 どんなに罵られようとも、残酷な運命に翻弄されようとも、決してくじけない大映ドラマのヒロインたち。彼女たちが背負った不幸の数々は、平和な現代から見ればあまりに非現実的かもしれない。

 しかし、その過剰なまでのドラマチックさと、不条理に立ち向かうエネルギーこそが大映ドラマの魅力でもあるのだ。ぜひこの機会に大映ドラマを見返してみて、昭和という時代の熱量を再確認し、渦中を生きるヒロインたちの姿に勇気をもらうのも良いだろう。

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