出生の秘密に過酷な試練、記憶喪失に突然の事故…なんでこんなに不幸なの!? 大映ドラマの主人公に起こった「悲劇の数々」を振り返るの画像
CD『大映テレビ主題歌コレクション~フジテレビ編』(キングレコード)

 2026年は、昭和元年の1926年から数えてちょうど“100年目”にあたる年である。激動の昭和を象徴するかのように、当時放送されていたテレビドラマも波乱万丈なものが多かった。その筆頭といえるのが、大映テレビが制作した一連の索引群、通称「大映ドラマ」である。

 大映ドラマといえば、通常では考えられないヒロインへの過激ないじめや複雑に絡み合う出生の秘密、そして独特のセリフ回しなどが印象的だ。

 今回は、そんな大映ドラマのヒロインたちが背負わされた「過酷すぎる運命」を、主人公の波乱の人生とともに振り返ってみたい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます。

 

■“実は大富豪の娘”がお約束? DNA鑑定がなかった時代の複雑な出生の秘密

 大映ドラマの定番設定の1つに、物語の根幹を揺るがす「出生の秘密」がある。DNA鑑定が一般的ではなかった昭和の時代、血縁関係を証明するのは容易ではなく、それが数々の悲劇とすれ違いを生んできた。その代表格ともいえるのが、1985年に放送された小泉今日子さん主演の『少女に何が起ったか』だ。

 北海道の漁村で育った小泉さん演じる主人公・野川雪は、母の死をきっかけに自身の父親が著名なピアニストだったことを知るところから物語が始まる。雪は父の家系である名門・東家を訪ねるが、そこで待っていたのは“財産目当て”という冷たい視線と、一族からの激しい反発であった。

 そして彼女は自身の血筋を証明するため、ピアノコンクールでの優勝を目指すこととなる。恵まれない環境のなか、紙の鍵盤で必死に練習する雪のシーンは特に印象的だった。

 また、同年に放送された伊藤かずえさん主演の『乳姉妹』も、出生の秘密がテーマである。

 大財閥の令嬢として何不自由なく育った伊藤さん演じる大丸千鶴子と、貧しい家庭で苦労を重ねてきた松本しのぶ(渡辺桂子さん)。2人は同じ日に生まれ、千鶴子の母が亡くなった際、しのぶの母が乳母として千鶴子を育てていたという過去があった。そこには運命を変える「乳児の取り替え」という衝撃の秘密が隠されていたのである。

 このように大映ドラマでは、「実はヒロインは立派な血筋の娘だった」「親を知らずに育った」という設定が多く見られる。こうした境遇はヒロインの孤独を際立たせ、視聴者の「守ってあげたい」という気持ちをかき立てる効果的な演出だったと言えるだろう。

■令和なら即アウト!? 少女を出迎える過酷試練と愛のムチ

 出生の秘密と並びヒロインを苦しめたのが、周囲からの壮絶ないじめや、指導者によるスパルタ教育だ。現代のコンプライアンス基準では許されないであろう過激な罵倒やしごきが、「愛のムチ」として描かれていたのである。  

 前述した『少女に何が起ったか』では、石立鉄男さん演じる刑事が深夜0時になると現れ、執拗に雪を尋問するシーンが語り草である。「おい、薄汚ねぇシンデレラ!」という強烈な罵倒は、当時の流行語にもなった。刑事でありながら未成年の少女に対して精神的圧力をかけ続ける姿は、今見ると非常に衝撃的である。

 また、1986年に放送された堀ちえみさん主演の『花嫁衣装は誰が着る』でも、ヒロイン・雪村千代は壮絶ないじめに遭う。千代は幼い頃に母を亡くし、ホテルを経営する伯父夫婦の家に引き取られた。そこで伯母から理不尽な暴力を受け、いとこの相良みさ子(伊藤かずえさん)からも執拗な嫌がらせを受ける。このようなひどい仕打ちにうるんだ瞳で耐える堀さんのひたむきな演技は、多くの視聴者の涙を誘った。

 こうした描写は、逆境に耐えるヒロインの健気さを強調するための演出といえるだろう。そして、その表現のエスカレートぶりこそが、大映ドラマを伝説たらしめている要因の1つなのである。

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