■「心に冒険を」大胆な脚色で古典文学を現代エンタメに昇華させた『アニメ三銃士』

 最後に取り上げたいのは、フランスの小説家アレクサンドル・デュマの『ダルタニャン物語(三銃士)』を原作とした『アニメ三銃士』(1987年)です。全52話+パイロット版「鉄仮面を追え『ダルタニャンの冒険より』」が放映されました。

 物語の舞台は17世紀初頭。フランス南部生まれの少年・ダルタニャンが、パリの街でアトス、アラミス、ポルトスの「三銃士」と出会い、さまざまな冒険を経て一人前の銃士として成長していくストーリー。

 監督は『魔法のプリンセス ミンキーモモ』の総監督を務め、後に『ポケットモンスター』シリーズなども手がける湯山邦彦さん。

 そして『ルパン三世』の作者である漫画家のモンキー・パンチさんが、原作をもとに“翻案”を担当したことでも知られています。17世紀フランスの重厚な世界観に、モンキー・パンチさんならではのスタイリッシュで軽妙なキャラクター造形やアイデアが融合し、低年齢層も楽しめる青春冒険活劇へと整えられました。

 余談ではありますが、モンキー・パンチさんの代表作である『ルパン三世』は、『三銃士』から着想を得たことが明かされています。つまり『アニメ三銃士』は、モンキー・パンチさんにとって“原点回帰”の作業でもあったのです。

 そんな本作の象徴的な脚色部分として知られるのが、三銃士の1人であるアラミスを“男装の麗人(女性)”にしたことでしょう。アラミスは恋人を殺された過去を持ち、その復讐のために男装して銃士隊に入ったというドラマチックな背景がありました。

 この設定は当時の視聴者……特に女性から熱狂的に受け入れられ、後に彼女を主人公にした劇場版『アラミスの冒険』(1989年)が作られるほどの人気に。 

 それまでのNHKアニメの多くは、海外アニメの買いつけや、文学作品を忠実にアニメ化した作品が中心でした。しかし『アニメ三銃士』は人気漫画家を翻案に起用し、主題歌に当時のトップアイドル酒井法子さんを抜擢。イメージソングには長山洋子さんや渡辺典子さんを起用するなど、民放アニメに負けないくらい、商業的・娯楽的なフックを意図的に取り入れた画期的なプロジェクトだったのです。

 物語後半は、原作の続編要素を取り入れつつ、アニメオリジナルの「鉄仮面」との対決がメインとなる独自の展開を見せます。単なる名作の映像化にとどまらず、毎週の展開をワクワクさせる連続ドラマとしての構成が秀逸な作品でした。


 NHKの「夜7時半枠」では、これらの他にもエポックメイキングなアニメを生み出しています。スウェーデンの地理を学びながら、環境問題なども考えさせられた『ニルスのふしぎな旅』(1980年)。番組最後に実写のミニドキュメンタリーコーナーがあった『太陽の子エステバン』(1982年)なども印象的です。

 そして昭和ではありませんが、庵野秀明監督の『ふしぎな海のナディア』(1990年)も宮崎駿監督の『未来少年コナン』の企画がベースになっており、その片鱗をそこかしこから感じることができました。

 こういった画期的な作品たちがファンに支持され、NHKアニメ史における重要なターニングポイントになったのは間違いないでしょう。

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