■「夢だけが持つ、明日という武器で」実写とアニメが交差するシルクロードの旅『マルコ・ポーロの冒険』
次に紹介する『アニメーション紀行 マルコ・ポーロの冒険』(1979年)は、ヴェネツィアの商人マルコ・ポーロの伝記『東方見聞録』を基に製作されたアニメ。毎週土曜日の夜7時半から放送された、全43話の作品です。
時は1271年、イタリアのヴェネツィアに暮らす17歳の少年マルコ・ポーロが、父と叔父に随行して東方へと旅立つ冒険と成長の物語。
主人公のマルコ・ポーロといえば、小学校の授業で習うような歴史的人物。教科書で見た顔はヒゲが印象的なおじさんでしたが、アニメでは凛々しい若者になっています。
そんな本作の画期的だった部分は、「アニメーションと実写ドキュメンタリーの融合」という実験的な映像作りにあります。
放映当時「連続マンガ・ドキュメンタリー」と銘打たれ、キャラクターが活躍するドラマ部分をアニメ映像、シルクロードの風景や現地の文化・歴史を紹介するパートは実写映像で構成。その実写部分は、NHKの撮影スタッフが実際にマルコ・ポーロの足跡をたどって過酷なロケを敢行していました。
アニメの物語を楽しみながら、同時に現実のシルクロードの歴史や地理を学べるという、後の「学習アニメ」や「ドキュメンタリードラマ」の先駆け的な手法で、これがきっかけとなって後にシルクロードブームの火付け役となったドキュメンタリー番組『NHK特集 シルクロード』が生まれます。
キャラクターデザインは、『あしたのジョー』や『宝島』などで知られる杉野昭夫さんが担当し、迫力ある劇画タッチの絵柄が実写映像とも見事にマッチ。マッドハウスの丸山正雄プロデューサー(現・MAPPA取締役会長)が構成を手がけ、音楽の小椋佳さん、マルコ役の声優・富山敬さんなど、各分野の超実力派が多数そろっていました。
『東方見聞録』をベースにしつつ、アニメとは思えない歴史的・教育的な価値があります。また17歳の主人公が、24年間に渡る苦難の旅を通じて成長していく姿がていねいに描かれ、当時の子どもたちに「世界への憧れ」を強く植えつけた作品でした。
いわばアニメ版・大河ドラマのような作品だった『マルコ・ポーロの冒険』ですが、NHKの公式サイトによると、実は長らく「幻の作品(第1話と最終回以外は映像消失)」だったそうです。
しかし2019年、「NHK番組発掘プロジェクト」の呼びかけにより、視聴者や関係者から映像が提供され、2021年に全話が復元・発掘されたことが話題になりました。
ちなみに、本作の初回放送のわずか2時間前に『機動戦士ガンダム』が放送を開始しており、アニメファンにとって伝説的な2作品が同じ日に産声をあげたことになります。


