実写化作品の成否を分ける要素は多々あるが、素晴らしいコスチュームが完成した時点で、すでに大きなハードルをひとつ越えていると言っても過言ではない。キャラクターが画面に姿を現した瞬間、観る者の目を奪うことができるか。その第一印象が、作品への没入度を大きく左右するのである。
原作を知っているファンであればあるほど、衣装の再現度に注目するのは当然だろう。色合いやシルエット、全体の印象がわずかに違うだけで違和感を抱くこともある一方、俳優の持つ雰囲気や動きと衣装がぴたりと噛み合った瞬間には、理屈を超えた説得力が生まれる。衣装とは、キャラクターに命を吹き込み、その存在を観る者に“信じさせる”ための大切なスイッチなのだ。
今回は、魅惑的なコスチュームによってキャラクターの魅力を最大限に引き出し、「実写化」を成功に導いた女優たちをピックアップ。シリーズで彼女たちの圧倒的な存在感と印象的な着こなしを振り返っていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
(第2回/全5回)
■ボーイッシュな魅力の体現者! 内田有紀さん『キャッツ♥アイ』三女・来生愛
北条司さんによる不朽の名作『キャッツ♥アイ』。喫茶店を営む美人三姉妹の正体が怪盗だったという設定は、漫画・アニメともに一世を風靡した。本作は2025年より『Disney+(ディズニープラス)』にて完全新作アニメが独占配信されるなど、令和の今、再び大きな注目を集めている。
そんな人気作が1997年に実写映画化された際、大きな話題を呼んだのがその豪華キャスト陣であった。
長女・来生泪役に藤原紀香さん、次女・瞳役に稲森いずみさん。まさに当時の「時代の顔」が一堂に集結したわけだが、なかでも注目すべきは、90年代のショートカットの象徴として絶大な人気を誇った内田有紀さんの起用である。
来生三姉妹のなかで最もボーイッシュな三女・愛という、本作で実質的なヒロインを内田さんが演じた。当時、この配役が発表された時点で、多くのファンが作品の成功を確信したに違いない。
実写化において「衣装の再現度」は常に高い壁として立ちはだかるが、本作は実写ならではの「衣装のインパクト」でその壁を乗り越えた。
林海象監督が手掛けた本作の解釈は、極めて大胆であった。原作やアニメ版の「怪盗キャッツアイ」のイメージといえばカラフルなレオタード姿だが、本作ではそのイメージを根底からアップデート。光沢のあるエナメル素材を多用し、猫耳が印象的なキャットマスクを装着したボンテージ風の、極めて近未来的な「バトルスーツ」へと進化させたのだ。
このタイトなシルエットのスーツは、一歩間違えれば身体のラインが過度に強調され、生々しさに繋がりかねない。しかし、内田さんは抜群のプロポーションとボーイッシュな佇まいでこれを見事に着こなし、「実写としての1つの解答」を提示してみせた。
当時のインタビューによると、内田さんは“セクシーでカッコいいキャッツスーツは気に入っていたけど、体を締め付ける衣装だったからパワフルなアクションでは動きが鈍くなり大変だった”、“ヒールが10cm以上のブーツで、撮影中に転んで捻挫をした”と明かしており、ここからも非常に過酷な撮影だったことがうかがえる。スクリーンでの美しく凛とした姿は、彼女の持つ高いプロ意識の賜物であったと言えるだろう。
映画後半、闇夜の屋上で三姉妹が美しくポーズを決める怪盗シーンは、実写ならではの様式美に満ちていた。ちなみに、フジテレビ本社屋を彷彿させる敵アジトのデザインは、製作に参加した同局へのオマージュと思われる。そのアジトにて、ケイン・コスギさん演じる敵役、李(黒旗)を相手にフェンシングで立ち向かうアクションシーンは、本作屈指の見せ場となっている。
本作の作風や衣装の大胆すぎるアレンジは、公開当時、少なからず賛否両論を巻き起こしたのも事実だ。しかし、四半世紀以上の時を経ても、内田さんらが演じる来生三姉妹が見せた鮮烈なビジュアルは決して色褪せることはない。当時のファンが抱いた驚きや戸惑いさえも、今となっては実写映画としての熱い「挑戦」の証であったと感じるのである。


