■「間柴了VS木村達也」意識を失いながらも拳に宿した執念
KOといえば勝者の華々しい栄光をイメージしやすいが、当然そこには敗者もいる。日本J・ライト級タイトルマッチ「間柴了VS木村達也」は、そんなKOの持つもう1つの側面を、あらためて考えさせられる試合だった。
負けたら「引退」します——試合直前に悲壮な決意を宣言したのは、挑戦者の木村であった。5年間ベルトを追い続けた木村はボクサーとしては若くなく、これが最後のチャンスだと覚悟し、すべてを懸けてこの試合に臨んだ。
世界挑戦も見据える間柴との実力差は歴然だったが、徹底した準備を積み重ねた木村は予想外の善戦を見せた。そして第8ラウンド、意識の外から襲いかかる「ドラゴン・フィッシュブロー」を間柴の顎に叩きこみ、不利だった形勢を一気に逆転。勝利に、そして念願のベルトに一気に近づく。
そして運命の第9ラウンド。半ば錯乱状態の間柴をさらに追い詰める木村だったが、とどめの「ドラゴン・フィッシュブロー」にまさかのカウンターを合わされ、痛恨のダウンを喫する。「ベルトも何も…… 見えねえよ」そうつぶやきながら崩れ落ちる木村の姿は、あまりにも痛々しかった。
鷹村ですら「立てると思うか?」と語る状態にもかかわらず、執念で立ち上がる木村。だが、その意識はすでになく、レフェリーストップによるTKOで試合は幕を閉じた。
意識を失いながらも木村が立ち上がったのは、ベルトへの強い想いであったのだろう。それでも無情に敗北を告げられるこのKOシーンは、苦くも忘れられない。
試合の終わりを告げるKOシーンだが、ボクサーたちの戦いがそこで終わるわけではない。千堂に勝利した一歩は、その後日本チャンピオンとして多くの挑戦者と死闘を繰り広げ、鷹村は6階級制覇の野望に向けて邁進し続けている。負けたら引退を宣言した木村ですら、再びリングに上がる道を選び、2026年現在も鴨川ジムのボクサーだ。
終わりの象徴であると同時に、次の試合への始まりのゴングでもある。それが『はじめの一歩』のKOシーンの本当の魅力なのかもしれない。


