■「ラキシス、おいで!」美しすぎるメカニックデザインと圧巻のクオリティ――『ファイブスター物語』
1989年(平成元年)に公開された『ファイブスター物語』は、永野護氏によるSF漫画を原作に、“昭和最後の大作”とも呼ばれた65分のアニメ作品。4つの太陽系からなるジョーカー太陽星団を舞台に、人工生命体・ファティマとともに巨大人型兵器「モーターヘッド(MH)」を駆る戦闘人間ヘッドライナーたちの物語です。
本作は、永野氏がメカニックおよびキャラクターデザインを務めたテレビアニメ『重戦機エルガイム』(1984年/サンライズ製作)の世界観と物語を再構築したものをベースに、休載を挟みながら40年近くも連載が続く人気作品です。
ちなみに、原作では「モーターヘッド(MH)」が途中で「ゴティックメード(GTM)」に変わったり、シリーズが進むにつれて使われなくなったりした用語もあるのでご了承下さい。
永野氏の放つ独創的な世界観を、当時の角川アニメとサンライズの技術によって実現させた奇跡のような作品です。圧巻なのは、永野氏の創り上げた美しすぎるメカニックデザインがイメージ通りに動く点。さらにキャラクターデザインや作画監督を務めた結城信輝氏の手がけるファティマの美しさ、朝川朋之さんの荘厳な音楽も相まって、そのクオリティに多くのファンが驚きました。
特に印象的だったのが、お披露目会でソープが観衆を割って「ラキシス、おいで!」と叫び、ヒロインを連れ出すシーン。何度見ても胸がキュンとします。
そしてナイト・オブ・ゴールドの機動シーンは、今もアニメファンの間で語り継がれるほどの美しさと迫力があります。
同時上映の『宇宙皇子(地上編)』は、藤川桂介氏によるファンタジー小説『宇宙皇子(うつのみこ)』を原作としたアニメ映画。飛鳥時代の混乱期を舞台に、鬼の子という異形の姿で生まれ、超常的な力を持つ宇宙皇子の成長を描いた物語です。
当時、宇宙皇子は若い女性から絶大な支持を集め、それに大きく貢献したのが、小説の挿絵や映画のキャラクターデザインを担当した、いのまたむつみ氏の繊細で美麗なイラストの魅力でしょう。
『火の鳥』などと同じく、合計2時間30分にも及ぶハイクオリティな角川アニメ映画2本を、通常料金で鑑賞できる満足感は計り知れず、今も色褪せない特別な映画作品として心に刻まれています。
昭和の時代、街の至るところで角川アニメ映画の公開を伝える情報を目にし、書店に行っては原作漫画やアニメ雑誌に触れて、胸をワクワクさせていたファンは多いはず。
角川アニメ映画には、今思うと信じられないほど豪華なクリエイターたちが製作に携わり、生まれた作品のクオリティの高さは今見ても驚くほどです。こうした角川アニメ映画の存在が、現在のアニメ産業の礎を築いたといっても過言ではないでしょう。


