■無双まちがいなし「服従させる魔法(アゼリューゼ)」

 七崩賢・断頭台のアウラが使用する「服従させる魔法(アゼリューゼ)」もまた、非常に強力である。これは強制的な「制約魔法」とも呼ぶべき、かなり特殊な魔法だ。

 まず術者と相手の魂を「服従の天秤」にかけ、魔力量を比較する。すると、魔力量が少ない方は多い方へ絶対的な服従を強いられる。この効果から逃れる術はなく、意志の強い者だけが一時的に抵抗できる程度だ。しかもアウラはその対策として、服従させた者の首を切り落としていた。

 この魔法を打ち破る方法は単純明快で、アウラを上回る魔力量を持つことである。フリーレンは長年自分の魔力量を制限してアウラを欺き、意図的にこの魔法を使わせた。そして、本来の魔力を解放してアウラの魔法量を上回り、逆に服従させて自害を命じたのだ。

 もしアウラがフリーレンの真の魔力量を把握していれば、天秤は使用しなかっただろう。相手の力量を見誤れば効果がそのまま自身に跳ね返ってくる、諸刃の剣ともいえる魔法だ。

 とはいえ、アウラを上回るような魔力量を持つ魔法使いはまれである。さらに、天秤が判断するのは魔力の最大値ではなく現在値なので、相手を消耗させてから使えば安全性を高められる。アウラもフリーレン相手に油断をしなければ、今も無双できていただろう。

 攻略法が分からないというより、攻略法が分かっていてもなお攻略が難しい。並の人間であれば出会ったら諦めるしかないレベルの魔法である。

■精神魔法の最高峰「楽園へと導く魔法(アンシレーシエラ)」

 同じく七崩賢・奇跡のグラオザームの「楽園へと導く魔法(アンシレーシエラ)」は、極めて強力な精神魔法だ。

 この魔法は、対象者にその者が思い描く「理想の世界」を見せ続ける。いつ術中にとらわれたか自覚できないため、気づいた時にはすでに夢の世界へと堕ちてしまう……。作り出された幻は非常に完成度が高く、フリーレンでさえ脱出の手段を見つけられなかった。

 しかし、「女神の加護」を持つ敬虔な者には効かないようで、ヒンメル一行の僧侶・ハイターには通じなかった。とはいえ、グラオザームの「…驚きました」「貴方は余程敬虔な僧侶のようだ」という言葉から察するに、並の信仰心では防御できないのだろう。つまり、ほとんどの者にとっては攻略不可能な魔法である。

 勇者ヒンメルは夢の世界にとらわれながらも、研ぎ澄まされた感覚を駆使してグラオザームを斬り伏せていたが、これは奇跡的な事例といえるだろう。

■意外と凶悪「大体なんでも切る魔法(レイルザイデン)」

 最後に紹介するのは、魔法使いユーベルが使用する「大体なんでも切る魔法(レイルザイデン)」である。一見地味な魔法だが、その応用範囲と威力は侮れない。

 これは術者が「切れる」と感じたものを、対象の防御力を無視して確実に切断できる魔法である。作中では、あらゆる攻撃魔法を通さないはずの「不動の外套」を、いとも簡単に切断してみせた。

 この魔法の弱点は、術者のイメージに依存する点にある。最初から固い、壊れないと認識しているものには通用しない。逆にいえば、衣類や人体など「切れる」と容易にイメージできる対象に対しては、無類の強さを発揮する。

 このように弱点はあるものの、使い方次第では相当凶悪な力を発揮する魔法といえる。「切れる」「切れない」の常識を何らかのかたちで破壊できたとしたら、最強クラスの攻撃魔法になりそうだ。

 

 今回紹介した魔法はいずれも極めて強力だが、使い方が難しかったり、そもそも使い手が限られたりするケースも多い。そう考えると、かつては最強とされ、今では基本の魔法となった「一般攻撃魔法(ゾルトラーク)」の存在感が際立つ。誰もが使える基本的な魔法でありながら、フリーレンやフェルンはこれを洗練させることで強敵と渡り合っている。

 単純な魔法の威力が勝敗を決めるわけではなく、敵との相性や戦術によって結果が変わるのも、魔法バトルの面白いところだ。今後、どのような個性的な魔法が登場するのか楽しみである。

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