1990年代から2000年代にかけて、テレビドラマは多くの人にとって最大の娯楽だった。インターネットがまだそれほど普及していなかったこともあり、人気ドラマの放送翌日には学校や職場でその話題が持ちきりになるなど、社会現象を伴うブームが次々と巻き起こったものである。
そんなドラマのブームを作った大きな要因の1つに、忘れられない「悪役」の存在がある。なかでも、主役のヒロインを執拗に、凄まじい顔で追い詰める悪女たちのインパクトは絶大だった。彼女たちが放つ刺激的なセリフは時に流行語となり、時代を象徴していたと言っても過言ではないだろう。
今回は、そうした往年の名作ドラマで強烈な印象を放った、女優たちが演じた「悪女」を振り返りたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■斜め45度の角度で傲慢な絵里花を演じた『家なき子2』榎本加奈子
1994年から日本テレビ系列で放送され、社会現象を巻き起こしたドラマが、安達祐実さん主演の『家なき子』である。
「同情するならカネをくれ!」というセリフが有名だが、本作は安達さん演じる主人公・相沢すずが、理不尽な大人たちや過酷な運命に抗いながら強く生き抜く姿を描いた物語だ。
本作の続編『家なき子2』ですずを執拗にいじめる傲慢なお嬢様、木崎絵里花を演じたのが、当時中学生だった榎本加奈子さんだ。 絵里花のトレードマークといえば、首を斜め45度に傾け、すずを見下すような視線で言い放つ毒舌の数々だ。
「絵里花がたとえてあげる」という高飛車な前置きから始まるセリフは、当時見ていて腹立たしく感じたが、その一方、“おまえが泥船に乗るなら、絵里花は豪華客船クイーンエリザベス号に乗るわ”といった、極端すぎる対比を用いたセリフは面白く、嫌なシーンでありながら、思わず笑ってしまったことを覚えている。
榎本さんの端正な顔立ちとスラリとしたスタイル、そしてあまりに堂々とした“性格の悪いお嬢様”ぶりは、視聴者に強烈なインパクトを与えた。彼女の悪役ぶりは、90年代ドラマの熱量を象徴するものといえるだろう。
■見開いた瞳と衝撃的なセリフでお茶の間を釘付けにした『牡丹と薔薇』小沢真珠
2004年、お茶の間に“ドロドロの愛憎劇ブーム”を再燃させた昼ドラが『牡丹と薔薇』である。
過酷な運命によって離れ離れになった姉妹を描く本作において、姉であるぼたん(大河内奈々子さん)を壮絶にいびり抜く妹・香世を演じたのが小沢真珠さんだ。
香世がぼたんに対して激昂する際、大きな瞳をカッと見開いて威圧するのだが、その表情は視聴者を震え上がらせるほどの迫力があった。
特に有名なのが、自分の要望に答えられないぼたんを「役立たずのブタ!」と罵倒したり、ぼたんが大切にしていた人形を引きちぎるなどといった、常識を超えた嫌がらせの数々だ。
また、浮気をした自分の夫に対して牛革の財布を焼き、皿に盛って出した「財布ステーキ」のシーンもあまりに有名だろう。こうした突飛で攻撃的なセリフや演出の数々は、2022年の深夜に再放送された際にも毎週SNSで話題になったほど、時代を超えて視聴者を惹きつけている。
小沢さんが演じた香世というキャラクターは、単なる悪役の枠を超え、のちにバラエティ番組でもネタにされるほど人気を博した。小沢さんは後年、自身の娘と『牡丹と薔薇』を鑑賞した際、「ママ、あれはダメじゃない?」と説教されたという微笑ましいエピソードも明かしている。


