■物語の鍵を握る静かな存在感…『踊る大捜査線』伊集院光

 1997年に放送され、社会現象を巻き起こしたドラマ『踊る大捜査線』。本作は青島俊作(織田裕二さん)や恩田すみれ(深津絵里さん)ら湾岸署刑事の活躍を描いたドラマだ。

 この第5話「彼女の悲鳴が聞こえない」において、すみれに対して執拗に付きまとうストーカー・野口達夫を演じたのが、伊集院光さんである。

 現在は博識なラジオパーソナリティやクイズ番組の常連としてのイメージが強い伊集院さんだが、このドラマでは犯人としての独特の存在感を放っていた。

 伊集院さん演じる野口は、アニメオタクで内向的な青年という役どころだ。だが、すみれを脅すビデオメッセージのシーンでは、淡々とした語り口の中に怒りや独占欲を滲ませており、不気味さを醸し出していた。

 大柄な体躯でありながら、どこか弱々しく、それでいて何を考えているか分からない危うい空気感。伊集院さんが作り上げた犯人像は、当時の社会問題となっていたストーカー犯罪のリアルな恐怖を体現しており、視聴者に強い印象を与えた。言葉を操るプロとしての卓越した表現力が、役柄に説得力を与えていたと言えるだろう。

■原作再現度の高さに驚き!『天才バカボン』上田晋也

 2016年から放送されたスペシャルドラマ『天才バカボン 〜家族の絆』は、赤塚不二夫さんの伝説的ギャグ漫画を実写化した作品だ。本作において、誰からも愛される型破りな父親「バカボンのパパ」を演じたのが、くりぃむしちゅー上田晋也さんだ。

 普段は名司会者として、鋭いツッコミと圧倒的な語彙力で場を仕切るイメージが強い上田さんだが、本作ではハチマキに腹巻き姿で元気良く登場し、「これでいいのだ!」と豪快に笑うバカボンのパパに変身した。

 額の笑い皺や表情の作り方は、まさにアニメや漫画のバカボンのパパそのもの。また、ビジュアルの再現度だけではなく、上田さんの持ち味である威勢のいい喋り口調が、キャラクターと見事なまでに合致していた。

 本作はバカボンをお笑いコンビ・おかずクラブのオカリナさん、重要なキーパーソンとしてマツコ・デラックスさんが登場するなど、お笑い界の人気キャストが多数起用されている。

 単なるコメディドラマというだけでなく、家族愛や人への思いやりも描かれた良作ドラマであり、上田さんの役者としての新たな一面を世に知らしめた1作だった。

 

 普段はお茶の間に笑いを届けてくれる、お笑い界のスターたち。しかし、一度スクリーンやドラマの世界に入り込めば、専門の俳優をも凌駕するほどの圧倒的な演技を見せつける。 その背景には、日常的に人間を深く観察し、笑いに転換させてきた芸人ならではの鋭い洞察力があるのかもしれない。

 彼らが見せる独特のリアリティは、「お笑い芸人としての顔」とのギャップも相まって、より視聴者の記憶に刻まれるのだ。

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