■千秋とのだめが生み出した唯一無二の関係性

 千秋の魅力が際立つのは、やはりのだめとの関係性を通してこそだろう。音楽に対して真面目なエリート・千秋と、型にはまらない感性型の天才・のだめという対照的な二人は、恋愛の枠を超えた唯一無二の関係性として描かれている。

 愛情を秘めながらも、それをあまり表に出さない千秋にとって、のだめのように自由で真っすぐに感情をぶつけてくる存在は新鮮だったはずだ。作中では、率直さが千秋にとって信頼へとつながる要素となっていく。

 実際、飛行機へのトラウマを克服できたのも置かれた環境の中で頑張ろうと考えられるようになったのも、のだめがいたからにほかならない。一方でのだめもまた、千秋と出会ったことで音楽と向き合い、自身の才能を磨くための努力を重ねていく。

 また、俺様な千秋が実は世話焼きであるという点も彼の魅力を引き立てる要素の一つだ。のだめのずぼらさにイラつきながらも、汚部屋を掃除して食事を作り、頭を洗って髪を乾かしてあげる姿からは優しさが溢れ出ている。

 玉木さんは、千秋のコミカルさとシリアスさを絶妙に演じ分け、物語に心地よいリズムを与えていた。のだめの奔放さを全身で表現した上野樹里さんを引き立てながら、千秋らしいピリ辛ぶりを確立させていたからこそ、二人のキャラがより際立っていたのだろう。

 のだめと恋仲になってからは彼女に向ける表情に愛が宿っていくのだが、中でも印象的なのは最終回である。のだめはパリに留学する話が持ち上がり、千秋もまたヨーロッパへの留学が決まりかけていた。

「頑張れば、いつか先輩と同じ舞台でコンチェルトできるかもしれない」と電話越しに明るく話すのだめ。その姿を少し離れたところから見つめていた千秋は、愛おしそうに駆け寄ると「一緒にヨーロッパに行こう。俺様を二度も振ったら絶対に許さない」と後ろから抱きしめるのだ。その瞬間に、二人が積み重ねてきた時間の尊さが凝縮されていた。

 圧倒的なカッコよさとコミカルさで「千秋さま=玉木宏」を印象付けた。本作出演の翌年にはエランドール賞新人賞を受賞し、さらに活躍の場を広げていくこととなった。

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