連載開始から半世紀を超えた今なお、多くの読者を魅了し続ける美内すずえ氏の不朽の名作『ガラスの仮面』。本作は、演劇の天才少女・北島マヤが、幻の演目「紅天女」の主演を目指し、奮闘していく物語だ。
本作の見どころはマヤの成長物語もさることながら、読者を惹きつけてやまないもう1つの軸がある。それが、マヤと冷徹なエリート社長・速水真澄との恋の行方だ。
改めて本作を読み返してみると、真澄のマヤへの献身ぶりがもの凄い。日本を代表する芸能プロダクションの社長として多忙を極める身でありながら、彼女のためとなるとすぐに駆けつけ、常にサポートし続けてきた。
そこでここでは、読者を驚かせた真澄のマヤへの深すぎる愛情表現を振り返りたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■エリート社長がそこまでする!? マヤの舞台を守るための「裏工作」
大都芸能の若社長・速水真澄は、仕事に関しては冷酷無比な男として恐れられている。しかし、マヤのこととなると話は別だ。彼はその権力と財力をフル活用し、彼女が役者として成長するため、裏工作をすることもいとわない。その執念は、一企業の社長の域を超えている。
例えば、高校入学を控えるマヤのため、真澄は素性を隠して制服や教科書を贈り、金銭的にマヤをサポートする。また、舞台「奇跡の人」でヘレン・ケラー役を勝ち取るための特訓では、彼女が演技に集中できるよう長野県にある別荘を練習場所として提供している。
これらはすべて、正体を隠した「紫のバラのひと」としての贈り物であったが、1人の少女を支えるため費やす労力としては、明らかに度を超えているといえるだろう。
また「忘れられた荒野編」では、真澄はマスコミの注目を集めるため、舞台「イサドラ!」の初日パーティー会場にて、マヤに狼少女・ジェーンを実演するよう仕向けた。その場で狼少女を演じたマヤの圧倒的な演技により宣伝効果は抜群だったが、大衆の前で恥をかかされたと誤解した彼女は激昂。「大っきらい! あなたなんて死んじゃえ!」と、感情をぶつけている。
これにはさすがの真澄もショックを受け、作中お馴染みの“白目蒼白”状態になっていたが、それでも彼女のためを想い平静を装うのだ。嫌われ役に徹してまでもマヤの道を切り開こうとするその姿は、もはや無償の愛といえるだろう。
■もはやナイト…暴漢からマヤを身を挺して守りボロボロの姿に
真澄のマヤへの愛は、金銭的な支援に留まらない。時には自分の命すら顧みない過激な行動に走ることもある。
例えば「奇跡の人」の舞台にて、マヤが柱ごと倒れてきた花瓶の下敷きになりそうなシーンがあった。その際、真澄はとっさに飛び込み、自ら柱の下敷きとなってマヤを守っている。
さらに、映画「白いジャングル」公開中、当時のマヤの恋人であった里美茂の熱狂的な親衛隊に絡まれ、暴行を受けてしまう。その際も真澄は颯爽と現れ、ナイフを持った親衛隊たちを一蹴し、マヤを救い出した。
このようにマヤに危険が及びそうになると、真澄はためらうことなく彼女の前に立って盾となる。 本来、エリート社長であれば警備員を呼ぶなり警察に任せるなりするのが筋だろうが、真澄は常に自ら体を張り、マヤを必死に守り抜くのだ。
当時はマヤのことを「チビちゃん」と呼んでからかうなど、表面上は敵対関係のようであり、マヤからも「大都芸能の冷血漢!」と忌み嫌われていた。しかし真澄は、常にマヤが知らないところで彼女を守り続けるのだ。これらの行動からは、損得勘定のない純粋な愛情がうかがえる。


