鬼才・出﨑統監督が描いた「残酷なリアリティ」…昭和アニメ史に残る「伝説の悲痛シーン」【昭和オタクは燃え尽きない】の画像
Blu-ray『劇場版 あしたのジョー2』(バンダイナムコフィルムワークス) (C)高森朝雄・ちばてつや/講談社・TMS

 昭和アニメを代表する巨匠・出﨑統監督は、テレビアニメ『あしたのジョー』(1970年)や『エースをねらえ!』(1973年)など数々の名作を手がけ、「画面分割」や「透過光」、キャラクターを立体的に見せる「回り込み」など、CGのない時代にすべて手作業による革新的な「出﨑演出」を確立したクリエイターとして知られています。

 中でも、線画のみのセル画と背景を組み合わせることで、静止画を絵画のように見せる「ハーモニー」と呼ばれる技法は出﨑監督の代名詞。とくに1979年公開の劇場版『エースをねらえ!』での「ひろみ対お蝶夫人」の死闘において、迫力ある止め絵と演出で観客を圧倒、ファンのあいだでは今も名シーンとして語り継がれています。

 今回はそんな出﨑監督が、東京ムービー(現:トムス・エンタテインメント)で創りあげた作品の中から、当時リアルタイムでテレビにかじりついていた筆者が「怖すぎる!」と震えた「トラウマ級の名場面」を厳選し、振り返ってみたいと思います。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■昭和キッズのトラウマを量産した『ガンバの冒険』の「白い悪魔」

 1975年に放送されたテレビアニメ『ガンバの冒険』は、斎藤惇夫(あつお)氏の児童文学『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』を原作とした全26話の冒険活劇。

 ドブネズミの少年ガンバが、残虐なイタチ一族に支配された島を救うべく仲間たちとともに戦う姿が描かれています。原作では15匹いたネズミをアニメ版では7匹に絞り、それぞれの個性がより深く掘り下げられました。

 そんな本作を語る上で欠かせないのが、「白い悪魔」ことノロイの脅威です。通常のイタチの3倍の巨躯を誇る白イタチのノロイは残忍かつ狡猾。ガンバたちを何度も絶望の淵へと叩き落とします。

 暗闇に浮かびあがる真っ白な体と赤い目の対比、仕留めた獲物をくわえた血だらけの口元、壁一面に広がるネズミの血痕の生々しさは、幼心にゾッとしました。

 とくに第24話「白い悪魔のささやき」の回は、個人的にもっとも恐怖したエピソード。ノロイの策略で砦から逃げ出したガンバたちは、海に浮かぶ小さな岩穴へと逃げ込みます。

 食料を失い、空腹の島ネズミは、リーダーとして選んだガンバたちをエゴむき出しで責め立てます。さらに弟を人質にとられ、ノロイの手先をしていた太一は裏切り者として白い目で見られるなど、ギスギスした状況に。

 そのとき、ノロイはネズミたちに和解を持ちかけ、食べ物を提供すると提案します。ガンバは多数のイタチが隠れていることに気づいて止めますが、他のネズミたちは聞く耳を持ちません。

 すると一度は仲間を裏切った太一が、ノロイの本当の狙いを暴くために、自らをおとりにして飛びかかります。隠れていた大勢のイタチが太一めがけて一斉に襲いかかり、太一の小さな体は爪で引き裂かれ、踏みつけ、蹂躙されるのです。

 息絶えた太一をノロイが海に放り投げ、水面に広がる血……。その一部始終を岩礁から見ていたガンバたちは何もできません。両眼を見開いたまま海底に沈んでいく太一の姿に、筆者は大きなショックを受けました。

 子ども向けのアニメながら、圧倒的な絶望感を無慈悲に描いたこのエピソードは、多くの視聴者の心にトラウマ級の恐怖を刻み込んだのです。

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