■犬にとってはまさに動く要塞『銀牙 ー流れ星 銀ー』赤カブト
高橋よしひろ氏の代表作である『銀牙 ー流れ星 銀ー』は、1983年から1987年まで連載された作品だ。主人公の秋田犬・銀が、凶暴な殺人熊・赤カブトを倒すため、日本中の犬たちを率いて戦う壮大な物語である。
この物語で、銀たちの前に立ちはだかるあまりにも巨大な敵こそ、殺人熊の赤カブトだ。
赤カブトは第1話から登場し、いきなり本作のキーパーソンである熊撃ち名人・竹田五兵衛の左耳を削ぎ取っている。その圧倒的な巨体と迫力に満ちた攻撃シーンは、当時の“ジャンプっ子”にとって、「熊は恐ろしい動物である」と強烈に印象づけた。
赤カブトは隻眼の巨熊であり、過去に脳を損傷した影響で冬眠をせず、異常なまでの凶暴性を持っているという設定。この赤カブトに挑むのは人間よりも犬たちが中心であるため、犬と対比すると赤カブトの巨大さは一層際立つ。
犬たちにとって赤カブトはまさに“動く要塞”と呼ぶべき存在であり、その異常ともいえる攻撃によって数多くの犬たちが命を落としてしまう。幼い頃にこの漫画を読んだ筆者にとって、赤カブトの圧倒的な存在感はまさにトラウマ級であった。
ちなみに本作の冒頭は、スキー場に赤カブトが登場し、人々が襲われてパニックに陥るという展開から始まる。これは近年社会問題となっている熊の出没問題を予見したかのような内容であり、示唆に富んだストーリーとも言えるだろう。
昭和の『少年ジャンプ』に登場した「デカすぎる敵」たち。彼らはフィクションの存在でありながら、当時の子どもたちの心に恐ろしい記憶を刻み込んだことは確かだろう。
このような巨大な敵と現実世界で絶対に会いたくはないが、主人公たちが絶望的な体格差を乗り越えて強敵を倒していく姿は、今も昔も大きなカタルシスを与えてくれるのだ。


