■灰原の両親にとっての「シルバーブレット」
最後に、人物ではなく“あるもの”が「シルバーブレット」と呼ばれている例を紹介していく。それは、新一や宮野志保(灰原哀)を幼児化させた薬「APTX4869」である。
この薬を開発したのは、灰原の両親である宮野厚司と宮野エレーナだ。この薬が「シルバーブレット」と呼ばれていた事実は、コミックス第78巻収録の「漆黒の特急[ミステリートレイン][発車/隧道/交差/終点]」で明かされる。灰原に遺したテープの中で、エレーナが自身の開発する薬について、「父さんと母さんは願いを込めてこう呼んでるわ…」「シルバーブレット… 銀の弾丸ってね!」と語っているのだ。
テープ内で薬の名称は明言されなかったが、宮野夫妻が作っていた薬といえば、まず間違いなくAPTX4869だろう。「恐ろしい薬」という表現も、毒薬としての側面を持つこの薬に当てはまる。
灰原の姉・宮野明美の手紙によれば、エレーナにとって「銀色の弾丸は正義の弾」とのこと。つまり、宮野夫妻はAPTX4869を「正義の薬」として開発していたとみられる。しかしその一方で、ジンはこれを毒物反応が残らない便利な暗殺用の毒薬として利用していた。
このように、開発者の意図と組織での利用方法には大きな矛盾が存在する。また、APTX4869が一部の人間にもたらす「幼児化」の副作用が、エレーナが薬を「シルバーブレット」と呼んだ理由とどうつながるのかも不明だ。この薬についてはまだ謎が多く、組織の目的と密接な関係があると予想されるだけに、今後の展開が注目される。
しかし、この薬が、将来的に組織を壊滅させるきっかけ、すなわち組織にとっての「毒薬」になることは十分考えられる。エレーナが込めた「正義」の願いが、やがては組織を滅ぼす弾丸となるのかもしれない。
『名探偵コナン』における「シルバーブレット」は、ある者にとっては「脅威」、ある者にとっては「希望」という多面的な意味を持つキーワードである。今回紹介した3つの「シルバーブレット」のいずれか、あるいはそのすべてが、黒ずくめの組織を壊滅に導く鍵となることは間違いないだろう。


