■少年主人公の冒険譚は新たなフェーズへ『ドラゴンボール』孫悟空

 1984年から1995年にかけて連載された、鳥山明さんのバトル漫画『ドラゴンボール』。物語初期の主人公・孫悟空は、小柄で無邪気な姿が印象的だった。好奇心旺盛で元気いっぱいに活躍する様子は、まさに「冒険活劇の主人公」そのもの。

 しかし、そのイメージを一変させたのが、天下一武道会にて青年になって現れた悟空の姿だ。見違えるほど背が伸び、引き締まった体格と精悍な表情で登場したあのシーンは、今なお多くのファンの記憶に残っているだろう。

 この時、読者の誰もが「主人公が子どもから大人へと成長した」という事実を強烈に突きつけられた。ブルマが「しんじらんないわ〜あの孫くんが… けっこう いい男になっちゃったりしてさ」と驚きを口にしたように、それは単なる美男子への変化というよりも、少年が突如としてたくましい男性になったという印象のほうが強かった。

 少年の冒険譚として始まった物語は、この悟空の成長を境に、地球の、そして宇宙の命運を賭けた熾烈な「バトル」へと大きく舵を切っていく。悟空の成長は、単なる外見の変化にとどまらず、『ドラゴンボール』という作品そのものが新たなフェーズへ進んだことを象徴する大きな転換点だったのである。

 

 コエンマ、サボ、悟空。彼らに共通しているのは、単に外見が洗練されたという点ではない。それぞれ背負うものが増え、経験を重ねたことで得た覚悟や責任感が、その表情や立ち姿に現れていた。

 子ども時代を知っているからこそ、大人になった彼らの姿はより強く印象に残る。そのギャップと成長の物語があるからこそ、彼らは何年経っても語られ続けるのだろう。

 次に我々を驚かせる「成長後」が描かれるキャラは、いったいどの作品のどのキャラクターだろうか。そんな期待を抱かせてくれるのも、漫画の楽しみのひとつなのである。

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