日本テレビ系で1月14日にスタートした新ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』。主演を務める杉咲花さんと、その恋人役を演じる成田凌さんの名前を見て、思わず胸を熱くした視聴者も少なくないだろう。
2人は、2020年度後期のNHK連続テレビ小説『おちょやん』で、激動の時代を生きる夫婦を演じ、お茶の間に愛され人気を博した。そして、約5年ぶりとなる待望の再共演が、まったく異なるテイストの恋愛ドラマとして実現したのである。
※本記事には各作品の内容を含みます
■ 激動の時代を生きた「夫婦」から、令和の「恋人」へ
『おちょやん』は、上方女優・浪花千栄子さんの半生をテーマに、戦前から戦後の大阪で生まれた貧しい少女が女優として大成するまでを描いた作品だ。
杉咲さんはヒロインの竹井千代を、成田さんは人気喜劇一座「天海天海一座」の座長の息子・天海一平を演じた。
劇中で、互いの人生を激しく揺さぶり合い、まさに二人三脚で物語を牽引した千代と一平。喜劇の世界で切磋琢磨し、苦楽を共にしながらも、最後には別れを選ぶという壮絶な愛の形を演じきったのである。
対して、『冬のなんかさ、春のなんかね』で2人が演じるのは、令和の日本を生きる「現在の恋人」だ。
杉咲さん演じる小説家・土田文菜と、成田さん演じる美容師・佐伯ゆきお。昭和の激動を背負った前作とは一転、そこにあるのは、日常の延長線上にある「普段着の恋」だ。2人の間に流れる空気感をそのまま楽しむような自然体の関係が、再共演をいっそう新鮮なものにしている。
■ 会話劇の妙が描き出す、等身大の恋愛模様
『冬のなんかさ、春のなんかね』は、『愛がなんだ』(2019年)、『街の上で』(2021年)、『ちひろさん』(2023年)を手がけたことで知られる映画監督・今泉力哉さんが監督・脚本を手がける。
本作は、心地良い会話劇が大きな魅力となっている。特に印象的だったのは、第1話で描かれた、夜のコインランドリーでの偶然の出会いだ。
杉咲さん演じる文菜のイヤホンから漏れ聞こえた、ロックバンド「ミッシェル・ガン・エレファント」の楽曲をきっかけに、2人の会話はごく自然に展開していく。取り留めのない言葉の応酬を重ねるうちに、登場人物たちの距離と輪郭が、少しずつ浮かび上がってくるのだ。
その中で見せた、杉咲さんの繊細な演技も非常に魅力的だった。「まっすぐ“好き”と言えたのはいつまでだろう?」というキャッチコピーが示す通り、文菜は恋愛に対してどこか慎重で、深く踏み込むことを避けている人物として描かれている。
「始まったら終わる、つきあったら別れる」そんな喪失への恐怖から、第1話で彼女はノートに「だから私は 好きにならない人を好きになる」と書き記す。その場面は、彼女の内面を象徴する非常に印象的なシーンであった。
会話劇の中で見せる杉咲さんの静かな表情や沈黙、そして時折見せる小悪魔的な仕草。それらが、文菜というキャラクターが内に秘める矛盾した感情に、確かな説得力と深みを与えているのである。


