近年、漫画や小説の実写化が増えている日本の映像業界。そのなかでもアクション作品は、身体表現のクオリティが求められる分、実写化のハードルがひときわ高いジャンルである。
原作ファンからの期待が高まる中、作品の完成度を左右するのがキャラクターをどこまで再現できるかという点だ。そしてその鍵を握るのは、やはり俳優の演技力の高さにほかならない。
そうした難しい条件の中でも、原作さながらの奇抜な衣装に身を包み激しいアクションを体当たりで演じた女優たちはひときわ強い印象を残してきた。単にビジュアルを再現するだけでなく、動きの一つ一つでキャラクターの存在感を示していた点は大きな魅力と言えるだろう。
そこで今回は、ビジュアルもアクションも一切妥協せずにキャラクターの魅力を体現した、人気女優たちを振り返っていく。
(第1回/全5回)
■長澤まさみさんのキレキレアクションに目が釘付け『キングダム』
賛否が分かれやすい漫画の実写作品の中でも、高い人気を博しているのが『キングダム』シリーズだ。原作は『週刊ヤングジャンプ』にて2006年から現在も連載中の原泰久さんによる同名漫画で、累計発行部数は1億2千万部を超える。
物語は、秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓の争いが激化する中国の春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍を夢見る少年・信と後の始皇帝となる嬴政の歩みを壮大なスケールで描いた歴史アクションだ。
初めて実写映画が制作されたのは2019年のこと。主人公・信役に山﨑賢人さん、嬴政役に吉沢亮さんを迎え、王騎役の大沢たかおさん、河了貂役の橋本環奈さん、羌瘣役の清野菜名さんら人気俳優が集結。さらに、佐藤浩市さん、豊川悦司さん、小栗旬さんといったベテラン俳優陣も続々と名を連ね、豪華なキャスティングが話題となった。
本作が実写化成功例と評される理由の一つに、原作キャラクターの再現度の高さがある。信や嬴政はもちろん将軍たちや敵役に至るまで、まるで漫画からそのまま飛び出してきたかのような完成度を誇っているのだ。
中でも再現度の高さと原作キャラの落とし込みが際立っていたのが、楊端和を演じた長澤まさみさんだ。
楊端和は、女性でありながら山の民を束ねるほどの武力を誇り「山界の死王」と称される存在。凛とした佇まいと冷静沈着な思考力を併せ持ち、山の王にふさわしい威厳を放つ人物である。
長澤さんは、そんな楊端和というキャラクターを全身で体現している。凛とした表情で原作以上に刺激的にも見える衣装をまとい、長い脚を惜しげもなく披露するその姿は、妖艶さと勇ましさを同時に放っていた。その圧倒的な存在感は美しいの一言に尽き、ビジュアル面を含めたインパクトの強さはシリーズ屈指と言っていいだろう。
とりわけ印象深いのが、王都奪還編までを描く第1作でのアクションシーンだ。筋骨隆々の山の民を従え、自ら先頭に立って王都へと乗り込む楊端和の姿は圧巻である。仲間を奮い立たせる力強い叫びとともに二本の刀を縦横無尽に振るい、軽やかで無駄のない身のこなしで次々と敵を制していく。その一挙一動からは、まさに戦場に立つ王の風格が漂っていた。
こうした迫力あるアクションの裏には、長澤さんの徹底した役作りがある。というのも、長澤さんは剣に振り回されない強さを身につけるため、毎日100回の素振りを欠かさなかったという。しかも、ベッドに当たらないよう寸止めを意識して両手で行っていたというのだから、そのトレーニングが過酷なものであったことは想像に難くない。
あの衣装を自然に着こなしたうえでアクションシーンでも軸のぶれない動きを見せられたのは、そうした積み重ねによって鍛え上げられ、引き締まった肉体の賜物だろう。いつもは可愛らしい印象の長澤さんが楊端和という役柄を通して見せた力強さと艶やかさは、スクリーンに映るたび観る者の視線をさらっていった。
実写化の難しさをものともせず、原作の魅力を映像へと昇華させた『キングダム』シリーズ。その成功を語るうえで、長澤さん演じる楊端和の存在は欠かせない。スクリーンを駆け回るその姿は、観る者の記憶に深く刻まれることとなった。


