■真実へ挑んだ監察医のあまりに早い退場『仮面ライダーエグゼイド』クリスマス特別編 「狙われた白銀のXmas!」

 最後は、医療とゲームという異色のテーマの組み合わせで大きな話題を呼んだ『仮面ライダーエグゼイド』(2016年から放送)である。

 クリスマス当日に放送された第12話「クリスマス特別編 狙われた白銀のXmas!」では、放送当時屈指の人気を誇っていたライダーの退場という衝撃展開が描かれることになった。

 九条貴利矢は、アロハシャツに赤いジャケット、サングラスという軽快なスタイルで、飄々と場をかき回す“クセ者の監察医”だ。彼が変身する仮面ライダーレーザーは、バイクそのものに変形するというユニークさも相まって、人気を集めた。

 しかし、その軽さの裏では、友人を失った「ゼロデイ」の真相を1人で追い続けるという強い信念を秘めている。明るさと影を併せ持つ、まさに魅力あふれるキャラクターだった。

 だが、このクリスマス回で彼の物語は一気に暗転する。貴利矢は誰より早く物語の“真実”に辿りつき、幻夢コーポレーションの若きCEO・檀黎斗に迫ってしまうのだ。

 「君は知り過ぎた」。そう告げた黎斗は、仮面ライダーゲンム ゾンビゲーマー レベルXへ変身。罠によってすでに満身創痍であった貴利矢に容赦なく攻撃を叩き込み、致命傷を負わせる。

 降りしきる大雨の中、貴利矢は直後に駆けつけた主人公・宝生永夢/仮面ライダーエグゼイドに自身のドライバーを託す。しかし、肝心の“真実”を伝えることはできず、「GAME OVER」の無情な音声とともに、光となって消滅していった。

 クリスマス当日、さらには物語が始まって間もない第12話でのメイン級ライダーの消滅……。そのあまりに早すぎる退場劇は、シリーズ屈指の衝撃シーンとして今なお語り継がれている。

 

 クリスマスの浮かれたムードを一瞬で吹き飛ばす、独特のインパクト。時にメイン級キャラの退場が飛び出すこともある『仮面ライダー』シリーズの「クリスマス回」は、まさに“油断できない特別な日”として、視聴者の間に定着した。

 主要キャラクターの突然の退場劇がもたらす予測不能な緊張感こそが、シリーズが長く愛され続ける理由の1つなのかもしれない。

 だからこそ思ってしまう。「今年のクリスマス、仮面ライダーは大丈夫だろうか」と。期待と不安が入り混じる“聖夜”が、またやって来るのである。

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