■アラサー世代のバイブル『29歳のクリスマス』
「結婚」か「仕事」か——29歳という年齢特有の焦りや葛藤をリアルに描き、女性の生き方を社会に問いかけたのが、1994年にフジテレビ系列で放送された『29歳のクリスマス』だ。
アパレル会社で働く主人公・矢吹典子を演じたのは山口智子。その親友でカメラマンの今井彩(松下由樹)、商社マン・新谷賢(柳葉敏郎)との友情や恋心を軸に、傷つきながらも前を向く等身大の主人公の姿に多くの女性が共感した。
本作は、1990年代では肩身が狭いイメージもあった“恋人以外と過ごすクリスマス”を描いた点も画期的で、新しい女性のライフスタイルを提唱するような力強さも感じられた。
このドラマの主題歌は、マライア・キャリーが歌う『恋人たちのクリスマス(All I Want For Christmas Is You)』。
今や世界中で流れるクリスマスソングの定番だが、日本ではこのドラマをきっかけに爆発的な知名度を得た。
オープニングの軽快なリズムと、ドラマのスタイリッシュな映像美は、当時の「カッコいい女性」の象徴そのもの。見ているだけで元気がもらえる1作である。
■月9の王道が復活したとも話題に『ラストクリスマス』
1990年代のトレンディドラマの雰囲気を2004年に蘇らせたのが、フジテレビ系「月9」枠で放送された『ラストクリスマス』だ。
主演は『東京ラブストーリー』以来、久々の恋愛ドラマ復帰となった織田裕二と、矢田亜希子。
織田演じる会社員の春木健次が住むマンションの隣室に、矢田演じる秘書のヒロイン・青井由季が引っ越してくるところから物語は始まる。2人はドア越しの会話を通し、徐々に交流を深めていく。
本作は2000年代に大ブームだったスノーボードのシーンを積極的に取り入れ、都会的なマンションでの隣人同士の交流など、ロマンチックな要素がふんだんに盛り込まれていた。90年代のドラマを知る人にとっては、「これぞ月9!」という王道のラブコメディにも見えただろう。
本作の主題歌は主演の織田自身が歌っており、イギリスのポップデュオ「ワム!(Wham!)」の名曲『ラスト・クリスマス』をカバーである。当時、「織田さんがワムを歌うの!?」と驚きの声も上がっていたが、その少し甘く優しい歌声はドラマの世界観にぴったりとハマっていた。
今回紹介した作品は、いずれも楽曲のイントロを聴くだけで当時の記憶が鮮明に蘇る名作ばかりだ。 時が経っても、これらの主題歌を耳にした瞬間、“あの頃”のクリスマスの熱気やときめきを思い出す人も多いだろう。
今年のクリスマスは、ぜひ今回紹介したドラマをゆっくり見返してみてはどうだろうか。 色褪せない名曲とドラマチックな物語が、聖夜をよりロマンチックに演出してくれるかもしれない。
(文中敬称略)


