激しい感情のあまりにパワーアップ『HUNTER×HUNTER』『NARUTO』『幽☆遊☆白書』『ドラゴンボール』にも…ジャンプ史に残る「主人公のブチ切れ覚醒シーン」の画像
DVD「劇場版 HUNTER×HUNTER ハンター ハンター The LAST MISSION ラストミッション」(バップ) (C)POT(冨樫義博)1998年-2013年 (C)ハンター協会2013

 バトル漫画において、「覚醒」は単なるパワーアップを意味するものではない。それはキャラクターが“何かを失う覚悟”を決めた瞬間であり、物語が大きく動き始める重要な転換点でもあるのだ。

 『週刊少年ジャンプ』(集英社)の歴史を振り返ると、読者の心に深く刻まれた覚醒シーンがいくつも存在する。今回はその中から、読者に強烈な衝撃を与えた伝説的な4つの覚醒シーンを振り返りたい。あなたはいくつ覚えているだろうか。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■すべてを懸ける覚悟が生んだ異形の力『HUNTER×HUNTER』ゴン=フリークス

 1998年から連載されている冨樫義博さんの『HUNTER×HUNTER』は、能力バトルでありながら、キャラクターの心理や選択を重厚に描く作品として知られている。そこでは勝利によって得られた結果よりも支払った代償が強調される場面も多く、戦いの結末は決して爽快なものばかりではない。

 そんな本作において描かれた主人公、ゴン=フリークスの覚醒は、数あるジャンプ作品の中でも特に異質だった。それは「強くなりたい」という前向きな願いではなく、「もう終わってもいい」という自己犠牲的な決断によってもたらされたからだ。

 恩人であるカイトの「死」という非情な事実を突きつけられ、ゴンは怒りと後悔、そして激しい自己否定の感情を抱え込む。そして、彼が選んだのは、カイトの命を奪ったネフェルピトーを倒す力を得るために自分の未来そのものを差し出す「制約と誓約」だった。

 「もう これで 終わってもいい だから ありったけを」その覚悟と引き換えに、ゴンの肉体は強制的に成長を遂げ、禍々しいオーラと感情を失ったような表情を浮かべる。その強さは圧倒的であり、キメラ=アントの王直属護衛軍として強大な力を誇るネフェルピトーを一瞬で粉砕した。

 その姿は「覚醒」という言葉では生ぬるく、ゴンが人であることをやめた瞬間と表現したほうが良いかもしれない。勝利と引き換えにゴンが失ったものはあまりにも大きい。その代償の重さがあってこそ、この覚醒シーンは今なお語り継がれているのだ。

■怒りが封印を壊した瞬間『NARUTO-ナルト-』うずまきナルト

 1999年から2014年まで連載された岸本斉史さんの『NARUTO-ナルト-』は、仲間との絆や成長を軸に描かれてきた忍者漫画である。

 主人公・うずまきナルトは、体内に封印された尾獣「九尾」の力を暴走させながらも、それを制御し、共存する道を模索してきた。

 だが、そんなナルトが自らの意思で暴走を止められなかった瞬間がある。それは、ペイン六道との戦いの最中、日向ヒナタが目の前で倒されたときだ。ナルトの中にあった最後の理性が崩れ落ちてしまったのだ。

 仲間を失う恐怖、大切な人を守れなかった自分への怒り、そして幼い頃からの孤独の記憶。あらゆる負の感情が引き金となり、九尾の力は制御を失って暴走してしまう……。

 どす黒いチャクラに覆われ、獣のように変貌し、理性を失っていくナルトの姿はあまりにも危うい。この覚醒はヒーローの進化というよりも、主人公が憎しみから“怪物”へとなりかけた瞬間として、鮮烈に描かれていた。

 だからこそ、後にナルトが九尾と向き合い、その力を受け入れる展開がより一層際立つ。ナルトにとってこの暴走は、避けて通れない通過点だったのだ。

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