「自由すぎるスピンオフアニメ」はなぜ成立した?『野原ひろし 昼メシの流儀』脚本担当・森ハヤシ&モラルが語る制作秘話の画像
アニメ『野原ひろし 昼メシの流儀』  ©臼井儀人・塚原洋一/「野原ひろし 昼メシの流儀」製作委員会

 12月19日の放送で最終回を迎えたアニメ『野原ひろし 昼メシの流儀』。大人気アニメ『クレヨンしんちゃん』のスピンオフとして描かれる本作は、サラリーマン・野原ひろしが「昼メシ」という束の間の時間に全力を注ぐ異色のグルメ作品だ。

 今回は、脚本を務めた森ハヤシさん、モラルさんのクロストークを敢行。塚原洋一さんによる原作漫画の魅力を土台にしつつ、アニメならではの演出をどのように生んだのか。原作をどう読み解き、どのように膨らませたのか。 『昼メシの流儀』の裏側を掘り下げていく。

【第2回/全2回】

■一発OKだった「最後にチャイは勝つ」

ーー脚本を作るうえで、意識していたことや決めていたルールはありましたか?

森ハヤシ(以下、森)  「これはやめよう」というルールは特になく、プロデューサーや原作サイドからも、自由に書いていいと言ってもらえました。

 たとえば第1話の「カレーの流儀」ですが、ひろしが辛すぎるカレーに悪戦苦闘する描写を脚本で多数加えています。ジャンルとしては料理モノなのに、「美味しそう」という印象より、「面白い」を優先してしまい、書き終えたときに「これ大丈夫ですか?」と聞いたんです。そうしたら、「大丈夫です」と言われて(笑)。

 その時点で、面白さを強く打ち出すことに制限をかけずに作ってもいいのだなと感じました。

モラル 共通認識として「原作が持っている面白さの核からずれない」という点は大事にしつつ、「笑えるかどうか」を基準にしている感覚でした。

 われわれが楽しく書くことを、ちゃんと楽しんでくれるチームだなと感じましたよね。

モラル そうですね。ただ、自由にやらせていただいた分、書き手の気持ちが乗っていないと、その熱量は制作チーム全体にも伝わってしまいます。そういう意味では、かなりスリリングな環境でした。原作の塚原先生も、初稿の段階ですぐにOKしてくださって。途中でストップをかけずに伸ばしてくださったのは本当にありがたかったですね。

ーーものすごく楽しい現場だったことが伝わります。

 めちゃくちゃ楽しいですよ。終わってほしくないくらい(笑)。それに、少し悩むことがあっても、とりあえず書き出してみると途中から筆が走って、ギャグも生まれたりして。打ち合わせの空気もすごく良くて、たくさん褒めてもらえてうれしかったです。

モラル 僕もすごく楽しかったです。もちろん、打ち合わせの中でカットされた部分や変更はありましたが、チーム全体として「まずは誰かの野心に乗ってみる」という空気がありました。だからこそビビらずに、自分の中にあるものを出していこうという気持ちで臨めました。

 第1話で、「最後にチャイは勝つ」というワードにOKが出た時点でこの作品の向かうべき方向が決まった気がします。 ニコ動ではそこまでウケてなかったんですけど(笑)。

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