■鬼族の力を解放…『Re:ゼロから始める異世界生活』レム

 最後に紹介したいのは、長月達平氏によるライトノベル『Re:ゼロから始める異世界生活』に登場する鬼族の少女・レムだ。彼女はロズワール・L・メイザースの屋敷で働くメイドで、双子の姉・ラムがいる。

 男勝りで毒舌な姉のラムとは対照的に、レムは控えめで献身的な性格をしている。家事全般を得意とし、相手に仕えることに喜びを見出す、まさに理想のメイドといえる存在だ。

 気が小さいレムは、普段はラムの影に隠れているようにしており、その健気さは見ていて守ってあげたくなる可憐さを持つ。だが、一度敵と見なした相手や、大切な人に危害を加えようとする者に対しては、別人のように豹変。鬼族の能力を解放し、徹底的に排除しようとするため、手が付けられなくなるのだ。

 そんな姿が見られたのは、主人公のナツキ・スバルと出会ったばかりの頃。

 スバルを敵と見なしたレムは、額から角を生やし、右目を怪しく光らせながら、巨大な鉄球「モーニングスター」を軽々と振り回して襲いかかった。しかも、笑いながら本気で殺しにかかってくるため、非常に恐ろしい。

 普段の穏やかな姿からは想像もつかないその形相にゾッとしてしまったのは、筆者だけではないだろう。

 

 普段は物静かで穏やかに見える女性キャラが、一度怒ると凄まじい力を見せる……。その豹変ぶりは、物語に強烈なインパクトを与える重要な要素となっている。

 彼女たちの怒りの沸点はさまざまで、予測不能だ。だが、その感情の裏には、大切な人を守ろうとする想いや、譲れない信念が隠されていることが多い。そんな二面性こそが彼女たちの魅力を作っており、観る者を惹きつけるのだろう。

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