アニメ30周年『ふしぎ遊戯』90年代少女たちを熱狂させた魅力とは? まさかのシリアス展開にアニメ版での数々の神演出も…の画像
フラワーコミックス『ふしぎ遊戯』第1巻(小学館)

 1991年に『少女コミック(現:Sho-Comi)』(小学館)で連載が開始され、1995年にはアニメ化もされた渡瀬悠宇氏の少女漫画ふしぎ遊戯』が、2025年でアニメ化30周年を迎えた。

 それを記念して9月には、書き下ろされた新規イラストが華やかなテレビアニメ『ふしぎ遊戯30周年特設サイト』がオープン。10月3日からはYouTubeの「スタジオぴえろ」公式チャンネルにて、アニメの無料配信が開始された。

 本作のイラストを見るだけで、当時のワクワク感を思い出す人も多いだろう。今回は、1990年代前半に当時の少女たちを熱狂させた『ふしぎ遊戯』の魅力を語りたい。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

 

■少女漫画の王道!「冒険・恋愛・友情」の魅力

 『ふしぎ遊戯』は古代中国をモチーフとした異世界を舞台に、愛する人との愛や仲間との絆、親友との確執、そして激しい戦いを描いた、さまざまなジャンルが融合した冒険作品だ。

 物語は、女子中学生・夕城美朱と親友の本郷唯が、図書館で見つけた謎の古書「四神天地書」の世界に吸い込まれるところから始まる。美朱は降り立った紅南国を守るため、そして現実世界への戻り方を知るために、神獣・朱雀を召喚する使命を持つ「朱雀の巫女」となり、7人の戦士「朱雀七星士」を探す旅に出るのだ。

 先述したように本作は多様なジャンルにおける魅力がある。1つずつ紹介していこう。

 まずは「冒険」の要素だ。当時はまだ珍しかった“異世界転移もの”であり、古代中国風の世界観は少女たちの目には新鮮に映っただろう。物語の前半で描かれた“身体のどこかに痣のある仲間”を探して旅をするという展開は、まるで『南総里見八犬伝』のようで胸がワクワクした。

 その後、一行は朱雀召喚の儀式に挑むも失敗。そして、物語後半では朱雀と青龍の七星士による、玄武・白虎の巫女たちの遺産「神座宝」の争奪戦が繰り広げられる。そして最後は、現代の東京を舞台にした大規模な最終決戦へと発展していくのだ。舞台を変えながら続く壮大な物語は、多くの読者を魅了した。

 次に「恋愛」要素だ。当時『少女コミック(現:Sho-Comi)』で連載されていた本作は、『りぼん』(集英社)や『なかよし』(講談社)といった雑誌の作品に比べ、キスシーンや押し倒されるシーン、肌をあらわにするシーンなど刺激的な描写も多かった。家族でテレビを見ていて気まずい……と思ったことがあるのは、筆者だけではないだろう。

 また、美朱は恋に落ちる鬼宿を中心に、皇帝の星宿や、普段は女性の姿をしている柳宿からも心を寄せられる、平たく言えば、“逆ハーレム”のような要素もあった。さらには青龍召喚を狙う敵国の将・心宿とのドキドキ展開も描かれたが、やはり最大の魅力は、さまざまな困難が襲い来る中でも揺るがない鬼宿との一途な愛であろう。

 そして「友情」も物語の重要なテーマである。特に『ふしぎ遊戯』を語る上で欠かせないのが親友・唯との関係だ。

 お互いが想い合っているはずなのに、敵の策略によって仲違いし、美朱は「朱雀の巫女」、唯は「青龍の巫女」として敵対関係になってしまう。戦いはどんどん激しくなるが、美朱が唯のことを想い続ける美しい友情も大きな見どころだった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3