■『みゆき』と『キャッツ・アイ』からヒット曲が

 そして、分水嶺となるのが1983年だ。まず、3月にリリースされた『みゆき』(フジテレビ系)のエンディング曲『想い出がいっぱい』がヒットし、オリコン6位。フォークデュオの・H2O(エイチツーオー ※2は小さい文字)による同曲は、タイトルにも歌詞にも、作品に直接関係があるフレーズが含まれていないアニソンであり、そこが新しかった。

 そして夏に、アニソン史に残るあの曲が大ヒットする。『キャッツ・アイ』(日本テレビ系)の主題歌・杏里の『CAT'S EYE』である。作詞は三浦徳子、作曲は小田裕一郎と、初期松田聖子の楽曲を手掛けた作家陣によるこの曲はオリコン5週連続1位。また、同年の『NHK紅白歌合戦』でも披露され、翌年春には、選抜高等学校野球大会入場行進曲にも選出されている。テレビアニメの主題歌が『紅白』で歌われ、センバツの入場行進曲に選出されるのはこれが初めてとされる。

 1983年の秋には、ペンギンを擬人化したアニメが流れるサントリーのCM曲、松田聖子『SWEET MEMORIES』が大ヒット。この曲は翌々年にCMと同じキャラクターによるアニメ映画『ペンギンズ・メモリー 幸福物語』挿入歌として使用されることで、後付のアニソンとなった。トップアイドルの松田聖子とアニメとのタイアップが行われたのは大きな出来事だった。なお、『SWEET MEMORIES』は長い時間を経て、2022年に新海誠監督のアニメ映画『すずめの戸締まり』の作中でも使用されている。

■キョンキョン、ALFEEもアニソン市場に参入

 1984年には、1月に角川三人娘の三番手、渡辺典子がアニメ映画『少年ケニヤ』主題歌を含む『花の色/少年ケニヤ』というシングルで歌手デビューし、オリコン9位。3月公開の映画『風の谷のナウシカ』の劇中では流れない“シンボル・テーマソング”という扱いだった安田成美のデビュー曲『風の谷のナウシカ』も、オリコン10位を記録。つまり、アイドル系新人を売り出す際にアニメのタイアップが用いられるようになってきたのだ。

 また、同年春には小泉今日子のオリコン1位シングル『渚のはいから人魚/風のマジカル』のうち『風のマジカル』が映画『ドラえもん のび太の魔界大冒険』主題歌となった。さらに、7月公開のアニメ映画『SF新世紀レンズマン』の主題歌、ALFEE(現:THE ALFEE)『STARSHIP-光を求めて』はオリコン5位。また、7月公開の映画『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の主題歌として飯島真理が歌った『愛・おぼえていますか』はオリコン7位にランクインした。

 アニソンタイアップがさらに増えてくるのは、フジサンケイグループの一角であるキャニオン・レコード(現・ポニーキャニオン)が、自社からリリースされるシングルとフジテレビ系の番組とのタイアップを次々に組む体制を整えたことが大きい。

 顕著になったのは1985年からで、おニャン子クラブから生まれた2人組・うしろゆびさされ組が、『ハイスクール!奇面組』の主題歌『うしろゆびさされ組』でデビュー(オリコン最高5位)。1986年春からスタートした『めぞん一刻』の主題歌『悲しみよこんにちは』は、人気絶頂だった斉藤由貴が歌い、オリコン最高3位を記録した。

 なお、『タッチ』の主題歌である岩崎良美の『タッチ』もこの流れにある曲であるが、チャートでは12位が最高位だった。一方で、岩崎良美が歌う『タッチ』第2期オープニングテーマ曲『愛がひとりぼっち』は10位に入っている。

 アニメ制作会社であるキティフィルムと、同系列のレコード会社であるキティレコードが連動し、自社が関わるアニメ作品の主題歌を自社所属のミュージシャンやアイドルに歌わせる仕組みを整えていったことも、こうした流れに拍車をかけた。たとえば、安全地帯は『めぞん一刻』3代目オープニング曲として『好きさ』を担当し、オリコン最高4位のヒットにしている。

■アニソンのイメージを変えた『シティーハンター』

 80年代後半になると、アニソンがランキング上位に入ることは珍しくなくなった。そして、1987年4月、当時はまだそんな言葉はなかったが、あえて言えばのちの“J-POP”とアニソンの蜜月関係を決定的にした作品『シティーハンター』(日本テレビ系)が始まる。

 初期のオープニング曲の小比類巻かほる『City Hunter~愛よ消えないで~』は8位、エンディングで流れたTM NETWORK『Get Wild』は9位。どちらも都会的でスタイリッシュな作品イメージと曲のイメージが見事にハマった。

 特に『Get Wild』はこのチャートアクション以上のインパクトがあり、TM NETWORKの代表曲として愛され続けている。90年代になると、もはやリスト化が不可能なほどに、J-POPとアニメは蜜月関係を深めていくことになる。

 

 なお、蛇足だが、「オリジナルの放送・公開年がもっとも古い“トップ10入り経験アニソン”は何か?」となると、答えを『ヤマトより愛をこめて』に限定することはできない。1973年の『キューティーハニー』(NET系)の主題歌『キューティーハニー』も、その候補に入ってくる。前川陽子のオリジナル盤は当時トップ10入りしていないが、2004年に倖田來未のカバーバージョンがオリコン4位になっているのである。

 

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