実はまったくの別物…!?ファミコン名作『忍者くん』と『じゃじゃ丸くん』のちょっと謎めいた関係【ハードオフ大竹店長の「レトロゲームちょっといい話」】の画像
ファミリーコンピュータ『忍者くん 阿修羅ノ章』(写真/ふたまん+)

 数万円から数十万円の値段がつくこともある「レトロゲーム」の世界。そんなソフトがズラリと揃う『ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店』の店長にして、自身も大のゲームコレクターである大竹剛氏が、毎回1本のソフトを語るこの連載。今回、ショーケースに並ぶソフトの中から取り上げるのは——?

■忍者くんとじゃじゃ丸くんの謎めいた関係!?

『ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店』大竹剛店長(写真/ふたまん+編集部)

ハードオフ大竹店長の「レトロゲームちょっといい話」第25回

 『ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店』の店長、大竹剛です。今回はファミリーコンピュータで人気を博したアクションゲーム“忍者くんシリーズ”のお話です。

 もともと、シリーズの第1作目となったのは、UPLというメーカーのアーケードゲーム『忍者くん 魔城の冒険』(1984年)。忍者くんがジャンプで崖や城壁を登って、魔物が潜入したお城に乗り込む、珍しい縦スクロール型のアクションゲームです。これを翌年、ジャレコがファミコンに移植しました。

 シリーズでいちばん有名なのは、同じくジャレコがファミコンでリリースした『忍者じゃじゃ丸くん』(1985年)でしょうか。

 これは1作目の続編ではなく、ジャレコが独自に開発したファミコンオリジナルのスピンオフ。妖怪たちと戦う横スクロールアクションで、じゃじゃ丸くんは忍者くんの弟という設定のようです。テレビCMも流れ、ゲームは大ヒットしました。そして、じゃじゃ丸くんを主人公とした続編もたくさん出ましたが、今回は割愛します。

 1作目の純粋な続編にあたるのは、UPLのアーケード用『忍者くん 阿修羅の章』(1987年)です。こちらは翌年、UPLが自らファミコンに移植しました。

 忍者くんが海や洞窟などを冒険するアクションで、横スクロールのステージも採り入れられ、変化に富んだプレイを楽しめます。以上、ファミコンの“忍者くん”というと、この3本が思い浮かぶのではないでしょうか。

 私は当時から、なぜ『忍者くん 阿修羅の章』のみUPLから発売されたのか疑問に思っていました。権利の問題なのか、UPLとジャレコの間になにかがあったのか……。今はどちらの企業もなくなってしまい、UPLの『忍者くん』シリーズの権利をハムスターが、ジャレコの『忍者じゃじゃ丸くん』シリーズの権利をシティコネクションが引き継いでいるとのことです。

■家庭用ゲームに慣れてなかった!? UPL唯一のファミコンソフト

 現在当店では、『忍者くん 魔城の冒険』を箱・取説付きの完品で4950円(税込)、『忍者じゃじゃ丸くん』を4400円(税込)、そして『忍者くん 阿修羅の章』を2万2000円(税込)で販売しています。

 ジャレコから発売された2本は、当時よく売れたんでしょうね。当店の在庫も豊富で、落ち着いた価格になっています。

 対する『忍者くん 阿修羅の章』は、あまり売れなかったのか、全然見かけないんですよ。中古ソフトは、数が少ないものほど高額になる傾向があるので、ほかの2タイトルとはひとケタ違う販売価格になっています。

 UPLのファミコンソフトって、実はこの1本のみ。なので、商品作りに慣れていなかった面もあったのかもしれません。それを象徴していると感じるのが「パッケージの裏」です。

 ジャレコから出た2タイトルが、画面写真と解説文でゲームの中身がわかるようにしているのに対し、『忍者くん 阿修羅の章』は、パッケージ裏のデザインがスカスカ(笑)。タイトルとメーカーのロゴと、主人公の立ち絵がデカデカと配置され、ひとこと“冒険活劇大アクションゲーム”と書かれているだけなんです。

 ジャレコは初期からファミコンに参入していたサードパーティでした。販売力も宣伝力も、UPLより上回っていたのかもしれない。そこらへんが出荷本数の差となっているんでしょうか。

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