■“泥人形”となって崩れ落ちる悪…子どもたちに刻まれたトラウマ級の最期
第48話、皇位継承を賭けた試合に敗れた嘉挧は命を落とす。しかし、衝撃はそれだけではない。敵であるゴーマ族にも強烈な最期が用意されていた。
ゴーマ族の幹部であるザイドス、ガラ、そしてゴーマ15世が、次々と体が土へと変質し、そのまま崩れ落ちていく。彼らは6000年前の戦いですでに死んでおり、現在の姿は本作のラスボス・シャダムが泥人形に魂を吹き込んで作り上げた偽りの存在にすぎなかった、という事実が明らかになるのだ。
そして最終50話、衝撃はさらに加速する。亮との死闘の最中、ゴーマ16世となったシャダムは自らの短刀で意図せず致命傷を負ってしまう。その瞬間、彼の口から泥が溢れ出し、なんとシャダム自身も泥人形であったという、最大のどんでん返しが待っていた。
「オレも泥人形だったのか!? 嘘だろ!」
絶望し、助けを求めながら崩れ落ちていくシャダムの姿は、あまりに生々しいものであった。多くの特撮作品の悪役のように爆発して散るのではなく、人の形を保ったまま崩れ、最後にギョロギョロと動く目玉だけが残るという演出……。その異様な映像は視覚的にも心理的にも強烈なインパクトを残し、当時の子どもたちの心に深いトラウマを刻んだ。
■戦いは終わらない! 50年後、新たなダイレンジャー誕生
シャダム、そしてゴーマ族との熾烈を極めた戦いに勝利した亮たち。彼らは平和を取り戻した世界で、今度こそ本当の意味でダイレンジャーを解散する。
そして物語は、一気に50年後の未来へと飛ぶ。白髪となり、杖をつきながら「ダイレンジャー同窓会」に集まるかつての戦士たち。あれほど壮絶な戦いを繰り広げた英雄たちも、今は穏やかな日常を送る老人である。
しかし、その平和は突然破られる。ゴーマが復活し、テレビでは怪人が暴れ回る様子が中継されるのだ。その絶望的な状況の中、颯爽と現れたのは、この日のために密かに備えてきたという亮たちの孫たちであった。新たなダイレンジャーが誕生した瞬間である。
そのとき、かつて道士・嘉挧が語った言葉が重く響く。
「妖力が滅べば気力も滅び、気力が残れば妖力もまた残る。全てが虚しい戦いなのだ……」と。
すべては繰り返される。地球の平和を守るために、人は永久に戦い続ける。それこそが、『五星戦隊ダイレンジャー』という作品が示したテーマであった。
『スーパー戦隊シリーズ』史上屈指の傑作と言われる『五星戦隊ダイレンジャー』のクライマックス。その濃密さと余韻は、放送から30年以上経った今もまったく色あせない。
単に悪を倒す爽快感だけではなく、信頼の崩壊、力を失う絶望、立ち上がる勇気、そして戦いは永遠に繰り返されるという、子ども向け番組の枠を超えた厳しい真理が描かれていた。
『スーパー戦隊シリーズ』が幕を下ろそうとする今こそ、忘れられないあの衝撃と感動を、あらためて味わってみてはいかがだろうか。


