「誰が一番勉強した? 結局どこに受かったの?」『東京大学物語』『P.S. 元気です、俊平』『冬物語』受験漫画に登場する主人公たちの画像
『東京大学物語』【極!単行本シリーズ】1巻(いろは)

 いよいよ本格化する受験シーズン。昔も今も、難関大学を目指すには膨大な勉強量と強い覚悟が求められる。漫画の世界でも、そんなハイレベルな大学を目指すキャラはたびたび登場してきた。目標に向かって突き進む彼らの姿は、現実世界で合格を目指す学生の背中を押してくれる存在にもなるだろう。

 だがその一方で、漫画に登場した受験生や浪人生の中には、「いったいいつ勉強してるの?」と疑問に思うようなキャラも少なくなく、漫画を読んでいる立場としては、つい共感を覚えてしまったものだ。

 そこで今回は難関大学を目指す受験をテーマにした漫画作品で、登場キャラがどれだけ勉強に打ち込んでいたのかを、その結果とともに振り返ってみたいと思う。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■恋愛への雑念が多すぎる秀才?『東京大学物語』

 高学歴恋愛漫画の代表格といえば、1992年から『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて連載された江川達也さんの『東京大学物語』だ。累計発行部数が2000万部を超え、映画化・実写ドラマ化までされた本作は、IQ300を誇る個性際立つ高校生・村上直樹が、東京大学を目指しながら恋に翻弄される姿を描いたラブストーリーである。

 独特な演出、生々しい性描写、衝撃的なオチなど、他の作品とは一線を画す展開で、多くの読者に強烈なインパクトをもたらした。

 東大合格を目標に掲げ、サッカーもやめて勉強に打ち込む村上であったが、ある時、天真爛漫で不思議な魅力を持つ水野遥に一目惚れしてしまう。勢いで彼女に告白すると、予想外のイエスをもらい、交際がスタートすることに。

 遥は村上が東大を目指していることを知り、自身も東大受験を決意。高校3年生の途中からという困難な挑戦ではあったが、村上に止められてもその決意は揺るがなかった。

 睡眠時間を削って猛勉強し模試の成績を上げる遥とは対照的に、村上は性的な妄想に囚われて勉強に身が入らない。センター試験前のクリスマスにはデートに遅刻し(自分に想いを寄せる鈴木英里と会っていたため)、自己採点会では遥の胸を触って興奮するなど、欲望が止まらない。

 遥も村上のことで頭がいっぱいではあったが、それでも勉強はしていたようだ。そんな状況でのセンター試験の結果は村上752点、遥640点であった。

 だが、それからも村上の欲求はエスカレート。二次試験前に夜の学校で遥と関係を持とうとし、さらに試験前日には英里からの誘いを断れず、朝まで彼女と過ごしてしまう。

 結果、村上は不合格。東大受験生でありながら、ほとんど勉強をしてこなかった様子なので当然ともいえるが……。一方、遥は見事に文科一類に合格していた。この結果に、東大合格を自身のアイデンティティとしていた村上の精神は崩壊。その様子は常軌を逸していた。

 その後、村上は早稲田大学に入学し、仮面浪人を選択。相変わらず性への欲求を爆発させながらも、翌年には文科一類合格を果たしている。

 日本最難関の東大への合格をテーマに繰り広げられる本作は、終始めまぐるしい衝撃展開が続く。だが、本当に読者を驚愕させたのは、最終的にやってくる「オチ」だろう。気になる方は、ぜひ本作を読んで確かめていただきたい。

■恋に翻弄され続けた浪人生『P.S.元気です、俊平』

 『東京ラブストーリー』など名作漫画を生み出してきた柴門ふみさんの『P.S.元気です、俊平』は、1980年から『週刊ヤングマガジン』(講談社)で連載された作品だ。主人公である加地俊平の高校・浪人・大学時代を描いた青春物語で、1999年には堂本光一さん主演でドラマ化もされている。

 物語は、高校生の俊平が桜小夜子に恋をするところから始まる。順調に距離を縮め、小夜子から告白されるも、俊平は自作の「恋愛計画表」にこだわりすぎるあまりに即答せず、結局失恋することになる。

 傷心の俊平は、心の穴を埋めるかのように受験勉強を開始。その短絡的な思考と行動が、男子高校生らしく純粋で初々しい。だが、勉強方法を間違えたことで受験に失敗し、東京の予備校に通う浪人生となるのである。

 上京した俊平は姉が住む女子寮で、明るく自由奔放だが、ちょっと強がりな太田原桃子と出会う。そして、彼女とつかず離れずの関係を繰り返しながら、長い恋の道に踏み出していく。

 物語には友人やアパートの住人との交流も描かれており、俊平の毎日はとても賑やかだ。しかし、その一方、勉強している様子はほとんど見られない。恋愛やアルバイトに明け暮れ、自分自身の在り方に葛藤する姿は若者らしいとも言えるが、浪人生としては心配になってしまうレベルだ。

 試験前日になっても、俊平は後輩の公美と親友の下川と賭け金付きで試験問題のヤマかけをする始末。当日、俊平のヤマはことごとく外れ、さらには試験会場でカンニングする女性を救うために騒動を起こしてしまう。

 だが、俊平は開き直り、その後の小論文試験で想いを自由に綴った。これが意外にも評価され、東上大学文学部に補欠Bで合格。補欠Aから繰り上げになっていくため不利ではあったが、なんとか繰り上げ合格を果たし、正規合格した下川と桃子とともに晴れて大学生となったのだった。

 真剣に勉強したとは言いがたく、かなり緩い受験勉強模様であったが、俊平のような浪人生の姿はある意味リアルかもしれない。

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