水島新司さんの名作『ドカベン』に登場する山田太郎は、数ある高校野球漫画の中でも「史上最高の捕手」と呼ぶにふさわしい存在だろう。
明訓高校では強肩強打を誇り、甲子園では4度の優勝を達成。その通算成績は打率7割5分、本塁打20本という、もはや人間業とは思えない記録を打ち立て、後にプロの世界でも輝かしい活躍を見せた。
さて、そんな山田太郎のような規格外の存在は別格として、高校野球漫画には他にも優れた名捕手が数多く存在する。ストーリーと甲子園を熱く盛り上げてくれた「最高の捕手」たちを紹介していこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■『MAJOR』天才投手陣を導き、本塁打も放つスラッガー「佐藤寿也」
まずは満田拓也さんの『MAJOR』から、名門の海堂学園高校で4番を務めた佐藤寿也だ。寿也は主人公・茂野吾郎の生涯のライバルであり、時には頼れるチームメイトでもあった、作中屈指の名捕手である。
小学生の時、親が借金によって妹を連れて夜逃げするという過酷な経験を持つが、その後、寿也は母方の祖父母に引き取られ、野球の才能を開花させていった。
吾郎と一緒に海堂高校のセレクションに合格し野球部に入ると、三軍の厳しい猛特訓を耐え抜き、特待生チームとの試合に挑む。4番の主砲、そしてエース・吾郎を引き立てる捕手としてチームの要となり、彼のピッチングを支えた。
本作において高校時代の最強投手とも言うべき存在が、この試合の終盤で登板した眉村健だ。うなりを上げる凄まじい剛速球は、自信家の吾郎ですら冷や汗をかくほどであった。
しかし9回裏、打席に立った寿也は眉村の豪快なジャイロボールにタイミングを徐々に合わせていき、バックスクリーンにサヨナラホームランを叩き込む。
このシーンもそうだが、作中を通して寿也はチャンスに強いのが特徴で、高校時代のみならず、プロ入り後も満塁ホームランを多く放っている。3年夏の大会で海堂高校を辞めた吾郎(聖秀学院高校)と対決した際にも、事前に吾郎のジャイロボールが時折「棒球」になることを見抜き、2打席目にはファウルで粘ってライトスタンドへ逆転スリーランを放った。
味方としては吾郎や眉村のような異才を放つ投手を巧みにリードし、そして敵としては超高校級の彼らの剛速球をホームランにしてしまう。そんな寿也の野球センスは、類い希なるものだった。
■『ダイヤのA』駆け引き上手! 個性豊かな投手陣をまとめあげた「御幸一也」
寺嶋裕二さんの『ダイヤのA』に登場する、東京の名門・青道高校野球部の御幸一也もまた、天才捕手だ。卓越したリードに確かな捕球力、そして強肩を武器に、個性派揃いの投手陣をまとめ上げたチームの要だ。
彼がリードするのは、3年生で怪我明けの丹波光一郎、2年生でサイドスローの川上憲史、そして、1年生で変則サウスポーの沢村栄純(主人公)、本格右腕の降谷暁という、学年もタイプも異なる4人の投手たちである。
特に御幸は、1学年年下の個性的な沢村や降谷を手なずけるのが上手かった。頑固でわがままな剛速球投手の降谷には気持ちよく投げさせ、調子に乗りやすい沢村にはアメとムチを巧みに使い分けるバランス感覚が絶妙。それぞれの能力を最大限に引き出していた。
3年生が抜けてからの新チームでは、主将兼4番打者を任された御幸。集中力も増してパワーも付き、長打を連発していた。
敵味方にかかわらず、相手の配球を読む洞察力、投手の心理を見抜く駆け引きは天下一品。加えて、右打ちが多い青道野球部の打線において貴重な左の強打者でもあった。
ちなみに、端正なルックスから女性人気が高いのもポイントだ。2016年に連載10周年を記念しておこなわれた「第一回人気投票」では見事1位を獲得。ファンからも熱い人気を得ている。


