■『H2』超高校級エースを巧みにリード! 人間関係も支える縁の下の力持ち「野田敦」

 あだち充さんの『H2』からは、主人公で超高校級の投手・国見比呂の親友でもある野田敦を挙げたい。

 敦は小学生時代から比呂とバッテリーを組み、彼の才能を最も理解している捕手だ。比呂からも厚い信頼を受けており、数多くの試合で勝利に貢献してきた。

 千川高校で4番打者を務める敦は鈍足ではあるものの、犠牲フライを打ち上げることを得意とするなど、勝負強さが光る。

 敦の捕手としての技術の高さは、なんといってもその捕球に表れている。剛速球はもちろんのこと、指が短くフォークの握りが安定しない比呂の落ちるか落ちないか分からない高速フォークを完璧にキャッチング。その安定感は、中学時代のチームメイトでライバルでもある明和第一高校の天才スラッガー・橘英雄に“日本一の女房”と評価されており、さらに“(肩の強さについては)どこへ出しても恥ずかしくない”とまで言わしめたほどだ。

 そんな敦だが、彼の最大の魅力と言えば人間関係に対する理解力かもしれない。比呂と英雄、そして幼馴染の雨宮ひかりと千川野球部マネージャーの古賀春華を交えた複雑な四角関係において、彼はまるで潤滑剤のような役割を果たしている。特に、あまり自分の本心を語らない比呂の心情を読み取り、さりげなくサポートする姿が印象的だった。

 彼らの心の機微をまるで人生を一周しているかのように理解する野田の存在が、物語に深みを与えていたように思う。

 

 ここで紹介した名捕手以外にも、魅力的なキャラは数多く存在する。たとえば、『名門!第三野球部』(むつ利之さん)の海堂タケシもその1人。彼は桜高校の落ちこぼれ集団だった三軍メンバーに猛特訓を課して、エース・檜あすなろの成長を引き出し、主将兼4番としてチームを甲子園出場へと導いた。

 高校野球漫画では主人公はエースであることが多く、捕手はその花形的ポジションの影に隠れがちだ。だが、ここで紹介した捕手たちは主人公の引き立て役でありながらも、ストーリーに欠かせない存在であった。彼らのようなキャラがいるからこそ、高校野球漫画は熱く盛り上がるのである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3