40年以上続いている『ガンダム』シリーズでは、これまでにさまざまな名セリフが生み出されてきた。その中には耳心地のよいフレーズと使いやすさから、爆発的に広まったガンダム発の慣用句も多い。
初代『機動戦士ガンダム』でスレッガー・ロウがビグ・ザムに特攻を仕掛ける際に発した「悲しいけど、これ戦争なのよね」や、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』第5話のサブタイトル「嘘だといってよ、バーニィ」などはその最たる例だろう。
信じがたい事実を知ったときに「嘘だといってよ、◯◯」と反応したり、にわかに信じがたい出来事に現実を突きつけるときに「悲しいけど、これ◯◯なのよね」と用いたりするケースは、今もネット上でたびたび見られる。
この他にも、現在では当たり前のように使われている言葉として、生活に浸透した言葉もある。そこで『ガンダム』シリーズや関係が深い作品で使用されたことで、一般層にまで広まったとされている「意外なワード」を紹介したい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■『∀ガンダム』で広まったワードが国語辞典に掲載!?
人に知られたくない恥ずかしい過去のことを「黒歴史」と表現するのは、今や当たり前となっている。このワードが広まったきっかけとされているのが、1999年に放送された富野由悠季監督によるアニメ作品『∀(ターンエー)ガンダム』だ。
同作では、過去の文明の産物が失われて、長い年月が経過した時代が物語の舞台となっている。「∀」とは集合論や論理学で用いられる「全称記号」であり、『∀ガンダム』より過去の時代設定となる『ガンダム』シリーズの作品すべてを意味するとされている。
つまり、『ガンダム』と名付けられた大半の作品の舞台となった世界が先史文明として扱われ、その文明が失われるに至った世界こそが『∀ガンダム』の舞台というわけだ。
そして、同作ではこれらの封印された闘争の歴史のことを「黒歴史」と総称している。
このワードが注目されたことにより、ガンダムファンを中心に「恥ずかしくて消し去りたい過去」という意味で「黒歴史」が使われるようになった。その後はガンダムを知らない層にまで広がり、現在は国語辞典に掲載されるほど幅広く認知された言葉となっている。
■ラブコメのお約束を表現した印象的なワード
「ラッキースケベ」とは偶然のハプニングの結果、男子にとってはちょっぴりムフフなラッキーイベントが発生することを指す言葉である。このワードを聞くと、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で2006年から連載されていた『To LOVEる -とらぶる-』を思い出す人も多いだろう。
『To LOVEる』は原作・原案は長谷見沙貴氏、作画は矢吹健太朗氏によるラブコメ漫画。本来は人畜無害な性格の主人公・結城梨斗が女性絡みのさまざまなハプニングに遭遇して、「ラッキースケベ」を起こしまくる展開で人気を集め、この言葉が爆発的に広まった。
しかし、このワード自体は、2004年に放送されたアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の中で、すでに使用されていた。
同作の第1話において、ザフト軍のミネルバ隊に所属する新人パイロット、シン・アスカにラッキーな出来事が舞い降りる。歩道を踊りながらぶつかってきた少女ステラをシンが後ろから支えたとき、思いきり彼女の胸をつかんでしまうのだ。
これを目撃したメカニックのヨウラン・ケントが、シンをからかうように「このラッキースケベ!」と発言。アニメや漫画でお約束の、偶発的なけしからんハプニングを分かりやすく、語呂のいいひと言で表現したのは偉業といえるだろう。


