漫画やアニメの世界には、剣士や格闘家など多彩な戦いの達人が登場するが、中でも独特の存在感を放つのが“ガンマン”だ。冷静に引き金を絞り、一撃で状況を変えるその姿には、見る者を惹きつける“何か”がある。
普段は飄々としていても、銃を構えた瞬間に空気を支配する──そんなギャップもまた、ガンマンたちの魅力だ。特に実在する銃を使うキャラクターの場合、作品にリアリティを与え、キャラクターを際立たせる。今回は、アニメ史に名を残すガンマンたちが愛用する銃を紹介していこう。
■各々の美学が見てとれる選択
まず『シティーハンター』の冴羽りょう(りょうの漢字はけものへんに寮)が愛用するのは、アメリカのコルト・ファイアーアームズ社製の回転式拳銃〈コルト・パイソン〉。その名はニシキヘビ(python)に由来し、ヘビの名を冠するシリーズのひとつだ。
.357マグナム弾を使用するこの銃は、発砲の反動による銃口の跳ね返りを抑えるため、職人による精密な手作業で組み上げられているのが特徴だ。調整箇所が多く生産しにくい構造で、その価格やこだわりから“リボルバーのロールス・ロイス”と称される。
冴羽のような、一見チャラついていながらも超一流のスイーパーとしての技術を持つ人物がこの銃を扱うことは、まさに作品の象徴的演出と言えるだろう。
続いて『ルパン三世』の主人公、ルパンが手にするのは〈ワルサーP38〉。第二次世界大戦期にドイツのワルサー社が開発した自動拳銃で、ドイツ軍の制式採用銃として広く使われた。高い命中精度と安全性を両立した構造で、ダブルアクション機構をいち早く採用したことでも知られる。
旧式ながら洗練されたメカニズムを持つP38。古き良きクラシックさを持ちながらも、時代を超えて通用する“泥棒紳士”ルパンの美学にふさわしい選択だろう。
ルパンの相棒であり、銃の達人として描かれる次元大介の代表的な愛銃は、アメリカのスミス&ウェッソン社製の〈M19(コンバットマグナム)〉である。.357マグナム弾を使用するリボルバーとして設計されたもので、扱いやすいサイズでありながら強力な火力を誇る。
もともとアメリカの警察やFBIに採用されていたモデルで、その軽量さゆえに銃と射手ともに負担が大きいとされている。反動が強くわずかなブレも許されないためか、次元は決して無駄撃ちをしない。引き金を引く時は、確実に仕留める時だけだ。その「一撃必殺」の姿勢が、M19の重厚な構造と重なり、作品のもうひとつの“美学”を形づくっている。
最強のスナイパーとして名高い『ゴルゴ13』のデューク東郷が最初に用いていたのが、アメリカのアーマライト社製の〈M16〉アサルトライフルである。「ブラック・ライフル」の異名を持ち、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争ではアメリカ軍の主力ライフルだったモデルだ。
ゴルゴはこのM16を独自にカスタマイズし、長距離狙撃に使用している。なぜスナイパーライフルを使わないかと疑問に思う人もいるだろうが、これは狙撃から近距離戦闘まであらゆる状況に対応するための選択。ゴルゴにとって、銃は目的を達成するための“道具”にすぎない。そうした究極の「仕事人」である彼の姿勢が反映された選択だといえるだろう。


