大泉洋さん主演、野木亜紀子さんが脚本を手がけるドラマ『ちょっとだけエスパー』が、放送開始から大きな話題を呼んでいる。予測不能なストーリー展開と巧みな会話劇、そして何より視聴者の目を釘づけにしているのが、13年ぶりに民放の連続ドラマへ帰ってきた宮﨑あおいさんの存在だろう。
物語の鍵を握るヒロイン・四季として登場する彼女は、年齢を重ねても変わらぬ透明感と確かな演技力で強烈な存在感を放っている。その姿にSNSでは、「可愛い」「やっぱり宮﨑あおいは別格」と、称賛の声が絶えない。
そんな声の通り、宮﨑さんはこれまでにも多くの作品で「可愛さ」を見せつけてきた。たとえ原作のイメージが求められがち実写化作品にあっても、その魅力を存分に発揮してきたのが印象的だ。
今回は、そんな彼女のキャリアの原点ともいえる“可愛すぎた実写化作品”を振り返りながら、時代を超えて輝き続ける宮﨑さんの魅力を改めて紐解いていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■10代の“淡い恋心”が眩しかった『ラヴァーズ・キス』
2003年に公開された映画『ラヴァーズ・キス』は、吉田秋生さんによる同名の漫画を原作とした青春群像劇である。舞台は鎌倉。男女6人の高校生が、それぞれの視点から同じ時間軸の出来事を語り、物語が多層的に交錯していく。
宮﨑さんが演じたのは、高校1年生の川奈依里子。姉・里伽子(平山あやさん、当時は平山綾名義)との関係に悩み、姉の友人・尾崎美樹(市川実日子さん)に密かな憧れを抱くという、思春期ならではの繊細な心の揺らぎを体現した役どころであった。
当時17歳の宮﨑さんは、まだあどけなさを残しながらも、感情の陰影を表情だけで伝えるなど、大きな存在感を放っていた。及川中監督が「依里子って役柄に宮﨑さんがスムーズにはまった」と語るように、キャスティングは最初に彼女から決まったという。その“はまり方”はまさに自然体。どこかに実在しそうで、それでいてスクリーンの中でしか出会えない唯一無二の少女像を作り上げていた。
物語の終盤、依里子は叶わぬ想いに区切りをつけるかのように、美樹の頬に静かにキスをする。公開当時の舞台挨拶で、“いろんな恋愛がこの映画の中には描かれているので、ドキドキしながら見てもらえたら嬉しい”と語った彼女の言葉の通り、その自然体の演技は依里子の“恋する切なさ”を鮮烈にスクリーンに映してみせた。
瑞々しい映像の中で微笑むその姿は、観る者の心に焼きつくほどの透明さを放ち、まさに「可愛すぎた宮﨑あおい」の原点と呼ぶにふさわしいものであった。
■恋も夢もまっすぐな“ハチ”そのもの『NANA』
2005年に公開された映画『NANA』は、矢沢あいさん原作の漫画を実写化した青春ストーリー。夢と恋、友情、音楽が交差する本作は、当時の若者文化の空気をまるごと閉じ込めたかのような作品だ。
物語は、偶然同じ日に上京する電車の中で、同じ「ナナ」という名前を持つ2人の少女が出会うシーンから始まる。そんな運命的な導入から、夢と恋、友情と裏切りが交錯するドラマチックな物語が展開されていくのだ。
宮﨑さんが演じたのは通称「ハチ」こと小松奈々。恋にすべてをかける奈々は、もう1人の主人公であるクールな大崎ナナ(中島美嘉さん)とは対照的に、誰かに守られたいと願う側の少女である。
ピンクや白を基調にした流行ファッションに身を包み、女の子らしさを全開にしたスタイルも印象的だ。少し甘えたような話し方や、彼女視点のナレーションに至るまで、原作漫画の奈々がそのままスクリーンに現れたかのようだった。
当時の完成披露会見で女性同士のキスシーンについて問われた際、中島さんは「全然嫌じゃなかった」、宮﨑さんは「大丈夫です」と笑顔で答えている。そんな屈託のない素直なやり取りも、まるで劇中の2人を見ているようで微笑ましいものだった。
泣き顔、笑い顔、困り顔。どの瞬間も宮﨑さん演じる奈々は観客の保護本能をくすぐる。ふとした仕草や声の響きに“天性のキュートさ”が息づいており、見ているだけでスクリーンがぱっと華やぐのだ。『NANA』は、女優・宮﨑あおいの持つ魅力を決定づけた一作と言っていいだろう。


