■“可愛すぎる”を超えたリアルな強さ『ソラニン』

 2010年公開の映画『ソラニン』は、浅野いにおさんの同名漫画を実写化した青春音楽ドラマである。大学卒業後も社会に馴染めず、なんとなく過ぎていく毎日の中で、若者たちが音楽を通して「自分の居場所」を探していく物語だ。

 宮﨑さんが演じたのは、主人公・芽衣子。社会のレールから少し外れた場所で、恋人・種田(高良健吾さん)と同棲しながら暮らす、等身大の20代女性である。

 この作品の宮﨑さんには、“可愛すぎる”という言葉では片づけられない魅力があるように思う。仕事を辞めた不安、夢を追う恋人を見守る焦り、そして突然訪れる喪失。それらを抱えながらも、ふと見せる無防備な笑顔が、切なくも眩しく、観る者の胸をぎゅっと掴むのだ。

 本作でやはり心に残るのは、物語のラストで芽衣子がギターを手に熱唱するライブシーンだ。交通事故で亡くなった恋人・種田の想いを引き継ぎ、彼の遺した楽曲「ソラニン」を自らの声で歌い上げる彼女の表情には、少女でも大人でもない、刹那的な輝きがあった。

 ボーカルもギターも未経験だった宮﨑さんは、撮影を振り返り「苦労はまったくありませんでした」「歌ってこんなに気持ちのいいものなんだっていうのを体感しました」と語っている。その言葉が示すように、彼女の歌声には演技を越えたリアルな感情や実感が宿っていた。

 『ソラニン』の宮﨑さんは可愛いを超越し、強さ、儚さ、そしてひたむきだ。そのひたむきさこそが、彼女が今なお多くの世代の人から愛され続ける理由だろう。

 

 これまでのキャリアを振り返ると、やはり彼女は作品ごと、時代ごとに“可愛すぎた”という言葉の意味を塗り替えてきた女優だと思う。

 13年ぶりの連続ドラマ復帰作『ちょっとだけエスパー』で、再び注目を集める宮﨑さん。今度はどんな新しい“可愛さ”を見せてくれるのか。その瞬間をまた見届けられることが、何より楽しみだ。

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