1970年~80年代に子ども時代を過ごした“昭和キッズ”なら、春休みや夏休みなどに劇場公開された「東映まんがまつり」のことを覚えている人も多いはず。
「東映まんがまつり」とは、アニメやドラマなどを製作・配給している東映が1967年から開始した、子ども向け映画作品を複数本同時上映する映画興行のこと。「東映まんがまつり」の名前では1989年まで興行され、2019年~2021年には復活興行が行われた。
基本的に30分程度の特撮作品やアニメ作品で構成されているため、トイレ休憩も取りやすく、子連れでの鑑賞にはありがたい内容だった。
その「東映まんがまつり」の上映作品の中で印象的だったのが、『マジンガーZ対デビルマン』のように、本来は交わるはずがない「正義の味方VS正義の味方」というタイトルがつけられた作品の存在だ。異なる作品の主人公同士の対立を示唆するタイトルを見て驚いた人も多いことだろう。
近年イベント上映された、石ノ森章太郎氏の『サイボーグ009』と永井豪氏の『デビルマン』をクロスオーバーさせた『サイボーグ009VSデビルマン』(2015年/全3話)のようなケースである。
今回は、昭和の「東映まんがまつり」の中で実現した「正義の味方同士のドリームマッチ」の結末を回顧。幼い頃、映画館でもらった紙帽子をかぶってワクワクしながら鑑賞した筆者が、それぞれの作品での対立理由と勝敗結果などを振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■永井豪の2作品が夢のクロスオーバー『マジンガーZ対デビルマン』(1973年7月18日公開)
1973年夏の「東映まんがまつり」にて公開された『マジンガーZ対デビルマン』は、日本を代表する漫画家・永井豪氏(ダイナミックプロ)が手がけた2作品のクロスオーバー映画だ。
当時としては大変珍しい、作品ジャンル、掲載雑誌、放送局の垣根を越えた夢の共演となっている。
テレビアニメ『デビルマン』は、人類を抹殺するためにデーモン族がデビルマンを派遣。デビルマンは人間の少年・不動明の体を乗っ取るが、牧村美樹という少女を愛したことで任務を捨て、デーモン族から彼女らを守るために孤独な戦いに臨むというストーリーだ。
そして『マジンガーZ』は、兜甲児が巨大ロボット・マジンガーZに搭乗し、地球征服を企むDr.ヘル率いる機械獣軍団と戦う、いわゆる搭乗型ロボット作品の元祖である。
劇中、光子力研究所を襲う2体の機械獣を撃退したマジンガーZだが、裂けた地面から妖獣シレーヌが復活し街を襲う。あしゅら男爵からその報告を受けたDr.ヘルは、デーモン族を洗脳支配することに成功した。
Dr.ヘルはデーモン族の強大な力を利用して、マジンガーZやデビルマンを狙うという展開になるが、デビルマン(不動明)はその悪巧みの一部始終をこっそり聞いていた。
光子力研究所に向かった不動明はマジンガーZに遭遇すると、「まるでウドの大木だぜ」「体ばかりデカくて何の役にも立たない」とこき下ろして兜甲児を怒らせる。
斜に構えた明の態度が引き金になり一触即発の事態になると、甲児と明はバイクレース対決に臨む。荒っぽい走りで悪路を突っ走るが決着はつかず。互いの腕前を認め合うが、明はマジンガーをバカにした言葉を撤回せず、「マジンガーZは空からの敵には弱い」「俺ならマジンガーZを空から攻めるね」と指摘。これに甲児は反論できなかった。
しかし研究所では、明が指摘したマジンガーZの弱点を補う飛行ユニット「ジェットスクランダー」が完成間近だった。その情報を知ったDr.ヘルはシレーヌを使って研究所を襲撃する。
シレーヌを目撃した明はデビルマンに変身すると、危うく殺されかけるところだったシローとさやかを救出した。
Dr.ヘルとデーモン族の脅威と狙いを甲児に伝えた明は、突如現れたデーモンの攻撃から甲児をかばう。そして彼の目の前でデビルマンに変身すると単独で敵を追った。
しかし、デーモン族と連携する機械獣の攻撃でデビルマンは倒されそうになり、そこにマジンガーZが到着。なんとか危機を脱した二人は、海辺で本音を語り合う。明が自らの置かれている過酷な境遇を明かすと、二人は固い握手を交わし、本当の意味での共闘が始まった。
その後、デビルマンが雲の上まで敵に連れ去られたときには、完成したばかりのジェットスクランダーを装着したマジンガーが大空に舞い上がる。そしてシレーヌやザンニンを倒し、Dr.ヘルも撃退したマジンガーは、デビルマンを救ったのである。
結局のところ、不動明と兜甲児が一時的に反目し、二人でバイク勝負をする場面はあったものの、最後まで敵として戦う描写はなかった。『マジンガーZ対デビルマン』という刺激的なタイトルに踊らされた気もするが、個人的には二人がバイク対決で披露したとんでもない運転技術は見ごたえがあり、総じて大満足の内容だった。


