『銀河英雄伝説』「早すぎる死」が惜しまれる自由惑星同盟の逸材たち ジャン・ロベール・ラップにウランフ提督も…生きていたら同盟の歴史が変わった?の画像
『銀河英雄伝説 COMPLETE GUIDE』(徳間書店)書影

 田中芳樹氏によるSF小説を原作とするアニメ『銀河英雄伝説』は、銀河帝国と自由惑星同盟という2つの国家の争乱を描く壮大なスペースオペラだ。

 本作において、最終的に戦乱を終結させ、銀河帝国による宇宙統一をなしとげたのが、ラインハルト・フォン・ローエングラムである。

 そんなラインハルトにとって幼なじみの親友であり、優秀な提督でもあったジークフリード・キルヒアイスは「早すぎた死」の代名詞として有名だ。小説では第2巻、アニメでは第1期という早い退場となったが、作中でも多くのキャラが「キルヒアイスが生きていれば」と口にするほど、その存在感と才能を惜しまれた人物である。

 「キルヒアイスが生きていれば歴史が変わった」というのは、多くの銀英伝ファンが感じたところであり、彼が生きてラインハルトを補佐した世界線を想像する声も少なくない。

 そこで今回は自由惑星同盟にもいた、早すぎた死が惜しまれる逸材をピックアップ。帝国のキルヒアイスと同様に、「生きていたら同盟の歴史が変わったのではないか」と思われるキャラを独断と偏見で紹介していきたい。

※本記事には『銀河英雄伝説』の核心部分の内容も含みます。

■魔術師ヤンの親友であり、超有能だった逸材

 ヤン・ウェンリーの士官学校時代の同期生で、親友でもあったジャン・ロベール・ラップ。学生時代はできの悪い生徒だったヤンと違って、優秀な人物だった。

 アニメでは第1話で登場し、その時点での階級は少佐。准将だったヤンより階級は下ではあったが、病気療養期間があったために出世が遅れただけで、その能力は高く評価されていた。

 そんなラップは第6艦隊で参謀を務め、アスターテ星域会戦に参戦している。ラップは同盟艦隊の危機をいち早く察知。各個撃破される危険性を艦隊司令官のムーア中将に進言したが、その言葉は聞き入れてもらえず、あっさりと戦死してしまう。

 このときラップは、帝国軍の思惑や動きをほぼ完璧に言い当てており、当時第2艦隊にいたヤンが見抜いた内容とほとんど同じ見解だった。もしも司令官が、ラップの意見を素直に聞き入れていれば、アスターテ会戦で同盟軍が大敗することはなかったかもしれない。

 少なくとも彼が美しい婚約者を残して早死することはなく、のちにヤンが昇進したあかつきには、おそらくラップを幕僚として迎え入れたはずだ。

 魔術師と謳われるヤンと同等の戦略的知見を持っていたラップが、その才覚を存分に発揮できる立場を得ていたら同盟軍は鬼に金棒だったことだろう。

 作品によっては、多数を相手に1人が立ち回って劇的な勝利をおさめる展開も見られる。だが『銀河英雄伝説』では、どれほど優秀な人材であっても、無能な司令官の下にいたのでは無力であることが描かれている。それもまた同作が普通の作品とは一味違う、リアリティを感じさせてくれる部分でもあった。

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