■ライダーをサポートする“警察ヒロイン”『仮面ライダードライブ』内田理央

 ドラマシリーズ『来世ではちゃんとします』(テレビ東京系)での体当たりの演技をはじめとする女優業、さらにはグラビアやモデルとしても活躍し、多くの支持を集める内田理央さん。そのキャリアの中で、大きな転機となったのが、2014年から放送された『仮面ライダードライブ』だ。

 内田さんが演じたのは、警視庁・特殊状況下事件捜査課(通称:特状課)の巡査・詩島霧子。刑事ドラマと特撮が融合した異色作において、主人公・泊進ノ介(仮面ライダードライブ)を支える頼れる“バディ”的存在であった。

 常に冷静沈着で、判断力と射撃の腕を武器に事件に立ち向かう霧子。怪人ロイミュードに銃を向ける場面も多く、“戦うヒロイン”として確かな存在感を放った。一方、当時の内田さんは“霧子とは真逆のタイプ”と語っており、役作りに大変苦労したことを明かしている。

 当時は23歳で、進路の岐路に立っていた時期。“納得いく仕事ができなければ辞めて就職しよう”と覚悟を決めて挑んだ役だったという。真摯に役と向き合った経験こそが、現在の飛躍につながっているのだろう。

■笑顔の奥には儚い真実…“電波人間タックル”『仮面ライダーディケイド』広瀬アリス

 妹の広瀬すずさんと並び、今や日本の映画・ドラマ界の第一線で活躍する広瀬アリスさん。15歳(撮影時14歳)の時に出演したのが、劇場版『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』だ。

 広瀬さんが演じたのは、昭和仮面ライダーで愛された「電波人間タックル」を現代に受け継ぐ少女・岬ユリコ。仮面ライダーディケイド=門矢士と行動をともにし、天真爛漫な無邪気さと健気さをのぞかせる存在だ。てんとう虫をモチーフにした赤いスーツに丸いヘッドギアという、レトロでキュートなコスチュームも印象的であった。

 しかし物語が進むにつれ、明るい笑顔の奥に秘めた切ない真実が浮かび上がっていく。愛らしさと儚さ、そして自らの宿命を受け止める強さ。10代の広瀬さんが体現したユリコ像には、のちの演技の幅につながる片鱗が確かに宿っていたといえるだろう。

 本作は、彼女にとって役名がクレジットされた初めての映画出演作であった。国民的女優の原点は、特撮の現場から始まっていたのだ。

 

 『仮面ライダー』シリーズは、子ども向けのヒーロー番組にとどまらない。厳しい撮影現場で役に向き合い、長い時間キャラクターとして生き抜く。その過酷ながらも貴重な経験が、若き俳優たちを育て、未来への扉を開いていくのである。

 松本若菜さん、井桁弘恵さん、内田理央さん、広瀬アリスさん。今となっては第一線で活躍する彼女たちの原点を辿ると、まさしくあの現場こそが“スター誕生の瞬間”だったことに気づかされる。

 そして今日も、画面の片隅には、まだ名の知られていない未来のスターが立っているのかもしれない。『仮面ライダー』シリーズはこれからも、未来の日本を代表する女優たちを静かに育て続けていくのだろう。

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