■3人が結託しBJを騙して手術をさせた「サギ師志願」
最後は、詐欺師に騙されたBJが彼らの悪事を知りつつも、結果として手を差しのべることになった珍しい展開のエピソード「サギ師志願」を紹介する。
病気の子どもを抱え、矢武井医院にやってきた貧しい母親。しかし貧しくて手術料が払えないことから、父親は子どもの命は諦めるしかないと言う。
そのやり取りを知った矢武井医師はBJに連絡し、“手術料3000万円を払うから、手術してくれ”と頼む。その後、父親に金持ちのフリをさせて3000万円の偽の小切手を持たせ、“手術が終わったら警察に捕まるが、その代わりに息子の命は助かる”と説得。詐欺行為を勧めるのだ。
こうして詐欺行為をおこなう両親と矢武井医師のもと、BJは子どもの手術をおこない、見事成功させる。しかし、手術を終えたBJが見たものは、父親が自ら110番をし、逮捕されようとする姿だった。
矢武井医師のアイデアにまんまと騙されたBJであったが、しかし3人の悪事がすべて子どもを助けるためだったと知ると、駆けつけたパトカーを見て“あれは私をつかまえにきたんだ”、“私は無免許医だから、とりあえず裏口から逃げる”と言い、小切手を返す。
結局、BJは善意による詐欺行為を咎めることなく、無償で手術をおこなったのであった。
数多くの手術を手がけるなか、多くの悪人たちまでも助けてきたBJ。しかし、こう振り返ってみると、BJが悪人たちを助けるのは、彼なりの正義や信念があることが分かる。
BJは患者がどのような人間であれ、目の前の“生きようとする意志”を決して無視する男ではないのだ。


