■勝利の実感が湧かなかった…『はじめの一歩』千堂武士vs幕之内一歩
最後に紹介したいのが、森川ジョージ氏による『はじめの一歩』(講談社)での千堂武士と幕之内一歩の対決だ。日本フェザー級全日本新人王決定戦で激突した2人は、インファイター同士、両者一歩も引かない壮絶な打撃戦を繰り広げた。
千堂には得意技のスマッシュがあり、2ラウンド目の一歩は直撃を避けるだけで精一杯だった。しかし、かつて宮田一郎を倒したアッパーで応戦し、反撃の機会をうかがう。
勝負の分かれ道となったのが3ラウンド。一歩のパンチがクリーンヒットして千堂はダウンを喫し、カウント9でどうにか立ち上がるも足はフラフラだった。
そのまま追い込めば勝利は近そうだったが、千堂は驚異の粘りを見せる。逆に一歩をロープ際に追い詰めるとスマッシュを食らわせ、猛烈な追撃によって立場は逆転。一歩はダウン寸前まで追い込まれた。
そんな中で一歩が何とか繰り出したパンチが、千堂のテンプルをとらえる。しかし千堂は何食わぬ顔で反撃に転じ、一歩を一方的に殴りつけた。3ラウンドが終わるまで千堂の猛攻は続き、無理やり引きはがされるまでその攻撃は止まらなかった。
インターバル中、一歩はコーナーに帰るのもやっとという状態で、試合を続けたとしてもすぐに倒されることは明白だった。そして運命の4ラウンドが開始となるが、なぜか千堂が動かない……。
なんと千堂は気を失っていた。その原因はテンプルへの一撃。千堂は意識がないまま、本能だけで戦い続けていたのである。
結果的に一歩の勝利となったが、リング上には千堂の凄まじい気迫が漂っており、一歩には勝利の実感が湧かなかった。その気持ちは読者も一緒だったはずだ。
格闘漫画では、実力が拮抗した者同士の戦いほど勝敗の予想が難しい。だからこそ、決着に至るまでの伏線が鮮やかに回収されたときの爽快感は格別である。
今回紹介したケースのように、読者の予想を心地良く裏切る決着シーンもあるからこそ、格闘漫画には尽きない魅力があるのだろう。
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