格闘漫画では数多くの戦いが描かれ、その決着もさまざまだ。両者一歩も譲らない激闘の末にようやく勝負がつく場面もあれば、圧倒的な実力差によって瞬殺という場面もある。中には、そうした王道の展開からかけ離れた、読者の予想を裏切る意外な結末を迎えることも少なくない。
そういった勝負の終わり方にさまざまな工夫とバリエーションがある点も、格闘漫画のおもしろさのひとつだろう。そこで今回は、格闘漫画で「まさか」と思った意外な決着シーンを紹介したい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■え、まさかの「死んだふり」?『バキ』郭海皇vs範馬勇次郎
板垣恵介氏による『バキ』(秋田書店)には、数多くの名勝負が存在する。中でも「地上最強の生物」と呼ばれる範馬勇次郎の戦いはあまりにも豪快すぎて、誰も真似できないほどだ。当然ながら、彼に挑戦したほとんどの人間は瞬殺されてきた。
しかし中には、そんな勇次郎を熱くさせるほどの実力を持った好敵手もいた。その1人が、中国拳法の頂点に立つ郭海皇である。100歳を超えてもいまだに現役という、化物のような武闘家だ。
郭海皇は「消力(シャオリー)」と呼ばれる脱力技術を駆使し、強大な力を生み出したり、相手の力を無効化したりして戦う。それによって一時は勇次郎を追い詰めたかに見えた……が、結局はそんな小細工が勇次郎に通用するはずもなく、真正面から力でねじ伏せられてしまう。
これまで積み上げてきた武が通用せず、勇次郎の力に圧倒されてピンチに陥った郭海皇。このまま行けば郭海皇の敗北、と思われた次の瞬間、勇次郎が繰り出した拳は郭海皇の目の前で停止する。なんと郭海皇は、戦いの最中に立ったまま絶命していたのである。
医師の診断は、まさかの「老衰」。勇次郎はこの意外すぎる決着に「ふざけんなアァッッッ」と叫び、複雑そうな表情を浮かべていた。
しかし、そのまま運ばれた郭海皇は、なんと何事もなかったかのように息を吹き返して起き上がったのである。
死を偽装した結果、勇次郎のとどめの一撃を避け、「死に勝る護身なし!!!」と語った郭海皇。その場に居合わせた武闘家たちは驚きを通りこして、呆れかえっていた。
どんな手を使ってでも生き延びれば負けではない、という彼の主張には納得する部分はあるものの、「そんな決着ってあり?」と驚かされた読者も多かったことだろう。
■勝負を決めたのはまさかの技…『修羅の門 第弐門』海堂晃vs陸奥九十九
川原正敏氏による『修羅の門 第弐門』(講談社)で描かれた、空手家・海堂晃と陸奥九十九の最後の戦いも、意外な結末を迎えた。
海堂は九十九と戦って一度敗北しているが、その後修行の末に独自の技を編み出す。それが空手の理想形とされる「空」で、あらゆる攻撃を飲み込み、カウンターとして返す恐ろしい技だ。
この「空」を前にして、陸奥圓明流の技さえ通用しなくなってしまう。九十九は奥義である「四門」を開いて対抗するものの、海堂はそれすら飲み込んでカウンターを食らわせる。九十九は虎砲に見せかけた無空波の振動により、かろうじて相手の動きを止めるだけで精一杯だった。
四門を使った反動と海堂の攻撃により、九十九の肉体は限界に達していた。対する海堂にはまだ余力が残っている。明らかに九十九にとって分が悪い状況に見えたが、彼は再び四門を開く。
最後の一撃……そう覚悟した九十九が放ったのは、上段蹴りと見せかけた後頭部蹴り。かつて父の現(うつつ)が手合わせでやってみせた、「ひっかけ蹴り」だ。本来、大したダメージは期待できない軽い技である。
しかし、四門を開いた状態で九十九が放った「ひっかけ蹴り」は、十分すぎるほどの威力があった。海堂はそのまま崩れ落ちて動けなくなり、九十九が勝利をおさめたのである。
まさか最終決戦の決着をつけた最後の決め技が、父親から教わった軽いひっかけ蹴りとは、誰も予想できなかったのではないだろうか。


