■息が詰まるようなリアリティあふれる決闘描写
原作・山川惣治氏、作画・川崎のぼる氏による漫画をテレビアニメ化した『荒野の少年イサム』。主人公・イサムが、開拓時代のアメリカ西部でさまざまな困難に立ち向かい、たくましく成長する物語だ。
原作漫画ではイサムが赤ん坊から青年へと成長する過程が描かれたが、アニメでは視聴者層の子どもに合わせて10歳前後の年齢に固定されていた。
子ども向けの作品ながら「人種差別」や「正義」といった重厚なテーマが扱われ、高畑氏(作中では「コンテ:高畠勲」の表記)は、第15話「死闘! ゴーストタウン(真夜中の決闘)」の演出を担当していた。
強盗団のウインゲート一家に拾われたイサムは、厳しい教育を受けて天才的な銃の才能を開花。非道な育て親たちと暮らしながらも、優しさや正義の心は失っていなかった。
しかしウインゲートに母親を殺され、復讐に燃える凄腕のガンマンのビッグ・ストーンは、一家のアジトを襲撃。ウインゲートは重傷を負い、イサムは負傷したウインゲートの看病をしていた。
ウインゲートは悪党とはいえイサムにとっては育ての親。弱った彼を見捨てられないイサムは、自分のことをかわいがってくれているビッグの前に立ちはだかる。
こうしてビッグと決闘することになったイサム。互いに気の進まない決闘が行われるが、その内容には一切の手抜きがなかった。
互いのライフルを相手の足元に置いて、合図と同時に取り合って開戦。すれ違いざまにビッグはイサムの足を引っかけるという容赦ない行動に出る。
さらに障害物を利用した、壮絶なライフルの撃ち合いに発展。イサムのライフルが壊れると、即座に拳銃に切り替えて早撃ちで応戦する。
こうして本編の約3分の2にわたって、ひりつくような銃撃戦が展開された。
戦いの中で偶然ウインゲートの居場所を見つけたビッグは、母親の恨みを晴らさんと銃口を向けるが、イサムと交わした約束を思い出して狙いを外す。その銃声に気づいて駆けつけたイサムを狙ったビッグの銃撃を、とっさにウインゲートがイサムの足をつかんで回避させる演出にはグッとくる。
この決闘は夜が明けても続き、灼熱の太陽が照りつける中、2人は疲労と暑さで意識が飛びそうになる。そしてウッドデッキの下に潜り込んで直射日光を避け、体を休めるイサム。彼の疲労や喉の乾きまで伝わってくるような、生々しさと緊迫感あふれる演出にしびれる。
リアルな西部劇をそのままアニメ映像にしたような躍動感のある動きや、時折差し込まれるひと気のない街を吹き抜ける風の描写なども素晴らしく、2人の息をのむような決闘シーンが忘れられない。


