■あれ…コックピットはどこが正解?

 『機動戦士ガンダム』における最終決戦で、アムロ・レイのガンダムと激戦を繰り広げたのが、シャア・アズナブルが乗った「ジオング」だった。登場時から脚部がついていなかったことは有名だが、この機体にも「ジオン驚異のメカニズム」と思われる仕様が導入されていた。

 ニュータイプ専用機として優れた性能を誇るジオング。その初出撃時、シャアは胴体部のハッチから乗り込んでいた。しかし、第43話でジオングの胸部にビーム・ライフルが直撃すると、シャアはジオングの頭部だけを分離させて脱出を図っている。

 胴体部から乗り込んだのに頭部だけで逃げるという違和感に、作画ミスを疑う声もあった。しかしガンプラ「MG 1/100 ジオング」の取扱説明書の解説には、「ニュータイプではないパイロットの場合、ボディ側のコックピットから機体制御を行い、頭部にはガンナーが搭乗してマニュアルでオールレンジ攻撃端末を操作する」と記載がある。ようするにジオングには、頭部と胴体部に2つのコックピットが存在するのだ。

 それでもアムロのガンダムと交戦中のシャアが、「頭部コックピットまでどのように移動したのか」という疑問は残る。

 ガンプラの解説書には「試作機ゆえに、機体の起動や初期設定などはボディ側のコックピットで行う必要があったようだ」とも書かれていた。そうなるとアニメに描かれた胴体から乗り込むシーンで、シャアはジオングの起動と調整を終え、そのあとアニメには描かれていないが頭部コックピットのほうに乗り込み直して出撃した、という見方もできそうだ。

 あるいはジオング自体に、2つのコックピットを高速で行き来するような特殊なギミックが備わっていたとしたら、それこそまさに「ジオン驚異のメカニズム」である。

■最新作でその技術が進化した? 驚きの分離機構

 ジオン軍の開発したニュータイプ専用機の第1号となったのが、モビルアーマー「ブラウ・ブロ」。脳波コントロールによる有線式メガ粒子砲を装備し、オールレンジ攻撃という概念を生み出した画期的な機体だ。

 そしてこのブラウ・ブロには、貴重なニュータイプパイロットを保護するための脱出システムが備わっていた。機体は中央、右、左の3つのブロックで構成され、この3ブロックは緊急時に分離(厳密にいえば左右エンジンもそれぞれ切り離し可能)して独立行動が可能だった。

 また、サイコミュが搭載されたニュータイプ専用機といいながら、複数のパイロットがそれぞれ操縦と砲手を担うことで、オールドタイプにも扱える設計にもなっている。

 それまでのジオンのモビルアーマーは機体を失うと同時にパイロットも道連れになる。いわば片道切符のような設計の機体が多かったが、ブラウ・ブロには「ニュータイプ」という貴重な人的資源を損なわないための工夫がなされていた点に感心させられる。

 なお、テレビアニメシリーズの最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』には、ブラウ・ブロにそっくりな「キケロガ」というモビルアーマーが登場。こちらは分離機構どころか中央ブロック部分が変形してMS形態になるという、とてつもない「メカニズム」を見せつけた。


 今回は、初代『機動戦士ガンダム』に登場したジオン公国軍の機体の中から「驚異のメカニズム」と呼ぶにふさわしい特徴的な技術や工夫などを紹介してみた。ガンダム好きの皆さんが、その「メカニズム」に驚いた機体は何だっただろうか。

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